雨漏り書斎:澤田ふじ子を読む
2008-12-19T05:58:21+09:00
amamori120
雨漏りするボロ家の書斎で本を読んだり、食い物の妄想に耽ったり,モー様に聴き入ったり・・・ ↑書斎の一部です
Excite Blog
公事宿事件書留帳 12,13,15 ほか
http://amamori.exblog.jp/9078479/
2008-12-18T15:35:00+09:00
2008-12-19T05:58:21+09:00
2008-12-18T15:36:46+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
20年近くに亘って書き続けられている
澤田ふじ子サンの人気シリーズです
著者遠?影
著者近影
公事宿とは、宿泊施設を備えた法律事務所のようなものですね。
江戸時代でも現代と同様、一般庶民にとって、訴訟手続きは面倒なものでした。
だから公事宿に依頼して裁判にかけたんですね。
また遠方からの客のために、宿泊施設を用意するのは当然のことでした。勿論賄い付きです。
江戸は馬食町、大坂は谷町、そして澤田サンの殆どの小説の舞台である京都は、二条城南の大宮通り界隈に固まっていました。
公事宿が扱うのは、主として<出入物(でいりもの)>つまり民事訴訟です。
原告が、目安(訴状)で相手を訴え、町奉行が相手を白州に呼び出して返答書を提出させ、対決(口頭弁論)と糾(ただしーー審理)を重ねた結果、裁許(判決)を下す・・・こういう流れなんですね。
これは素人には無理です。やはり司法に詳しい専門家に頼まなければなりません。
公事宿は必要なシステムでした。
登場人物その他の設定はコチラをご覧ください。
シリーズ 12
比丘尼茶碗 2007.10 幻冬社文庫・刊 ¥590
モーさんのK○○○に倣って雨漏りも読了した本にAナンバーを付けてみました。
本書はA-07-186 07年の186冊目です。
妙寿尼の焼く黒茶碗は名匠の作と見紛うほどの逸品。その茶碗を譲り受けた田村次右衛門(主演・菊太郎の父)は、尼僧の窮地を知り、宗琳(準主演・鯉屋源十郎の父)と共に人助けに立ち上がる。
菊太郎・源十郎たち現役組をさしおいて、今回は隠居組が大活躍。
表題作ほか、お婆の斧、吉凶の餅、馬盗人、大黒さまが飛んだ、鬼婆 を収録。
シリーズ 13 A-08-178
雨女 2008.6 幻冬社文庫・刊 ¥590
泥鰌の棒手売りをして暮らしている独り身の岩三郎は、或る大雨の日、自分の住む長屋の木戸にもたれて雨に打たれている若い女を助ける。事情は訊かずに、ただ置いてくれとしか言わない女の正体とは?
表題作ほか、牢屋敷炎上、京雪夜揃報、幼いほとけ、冥府への道、蟒(うわばみ)の夜 を収録。
シリーズ 14 「世間の辻」 は未読です。
シリーズ15 A-08-177女衒の供養 2007.9 幻冬社・刊 ¥1,680
気鬱の病でブラブラしている又七と一緒に暮らす、若い女おみさが、又七と別れた女房のところにやってきて、又七を引き取って面倒をみてほしいと言ってきた。
気鬱の病は又七が昔、女衒をやっていて多くの女を泣かせたことに原因があるようだ。男女関係のないおみさは何故又七の世話をしているのだろう?
菊太郎が見事に解決してみせる。
表題作ほか、奇妙な婆さま、牢囲いの女、朝の辛夷、あとの憂い、扇屋の女 を収録。
おまけ黒染の剣 2000.11 ケイブンシャ文庫・刊 ¥900
A-07-190
京の吉岡家は室町将軍の剣術指南役だったが、幕府崩壊とともに新しい染め物法を編み出し、染物屋として繁盛しているが、その高い剣名を目指して次々に武者修業の武芸者が現れては去って行く毎日。
そんなある日、宮本武蔵と名乗る、みるからにワイルドな獣の臭いをぷんぷんさせた男が挑戦状を高札に掲げた。
吉岡家から見た宮本武蔵を描いた小説。
畏友桃源児サンは武蔵の二天一流を習っておいでのようですが、本書の中の武蔵は、オーソドックスを本とする吉岡流に対して、勝負は勝たなきゃダメだとばかり、所謂汚い手を使いまくって勝つ卑怯な男として描かれていて、実に興味深いものがあります。
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澤田ふじ子「海の蛍」
http://amamori.exblog.jp/5339195/
2007-05-06T13:49:00+09:00
2007-05-06T13:56:01+09:00
2007-05-06T13:49:56+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
澤田ふじ子「海の蛍」
2005.9 徳間文庫・刊 ¥580
サブタイトル 伊勢・大和路恋歌 とあるように、私の郷里の方が舞台の
悲恋物が多い短篇集です。
澤田サン、”蛍”という言葉、字がお好きなようです。
「伊勢の椿」には私の生まれ故郷の町も出てきます。
幼稚ですが、なんとなく嬉しいものです。
初瀬(はせ)表街道は大和国初瀬から宇陀郡をすぎ伊賀国名張(なばり)にいたり、青山峠を越えて三渡(みつわたり 松阪市六軒町)で、近世の伊勢参宮街道と合流する。この街道はほとんど現在の近鉄大阪線や国道165号線に沿っていた。
律令制下、三重県は伊勢、伊賀、志摩の三国からなり、三国のなかで伊勢国の面積が最も大きく、国名はこれにもとづいている。
ついでですが、私が帰省するときは、新幹線で名古屋下車、近鉄特急に乗り換えて、桑名、四日市、白子、津(この先で伊勢志摩の方へ分岐しています)、名張、大和八木、鶴橋、上本町、難波と停まる近鉄大阪線の名張で下車するんです。名古屋~名張は約1時間半です。
なお初瀬路(はせじ)という名の和菓子、甘党キングダム(伊賀国)で、ご紹介しましたね♪
ちょっと煩わしいかもしれませんが、各篇名もご紹介させてください。
☆伊勢の椿
☆多度の狐
☆神贄斎王
☆やぶれ袋
☆海底の旗
☆斑鳩の雨
☆寒夜の酒
☆菊の門
☆磯笛の玉
☆父娘街道
☆鬼桜
☆哀しい宿
☆奈良の団扇
☆伊勢の聖(私がE区の聖と呼ばれていることはご案内の通りです ww)
☆霧の中
☆海の蛍
☆野宮の恋
☆炎の遷宮
いずれも澤田さんらしい、しっとりとした佳篇揃いです♪]]>
澤田ふじ子「遠い蛍」
http://amamori.exblog.jp/5339144/
2007-05-06T13:42:00+09:00
2007-05-06T14:09:43+09:00
2007-05-06T13:42:52+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
澤田ふじ子「遠い蛍」
1998.3 徳間文庫・刊 ¥560
短篇集です。
☆雨あがる
☆春の坂
☆あとの桜
☆夜の蜩
☆ひとごろし
☆鉄(かね)のわらじ
☆ろくでなし
☆雪の鐘 八篇を所収。
タイトルからして澤田サンらしいです。
「蛍」という言葉が好きで、これの入った作品がいくつもあります。
庶民の、きびしい暮らしのなかの、しっとりとした情感、生への挑戦が描かれた好短篇が揃っています♪ ]]>
澤田ふじ子「大蛇の橋」
http://amamori.exblog.jp/5148822/
2007-04-13T09:35:00+09:00
2007-04-18T12:05:48+09:00
2007-04-13T09:35:14+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
澤田ふじ子「大蛇の橋」2001.4 幻冬社・刊 ¥1,600
澤田サンの長編小説です。「大蛇の橋(おろちのはし)」なんて恐ろしげなタイトルですね。
舞台は勿論、京都そして丹波篠山。
江戸時代の身分制度のシビアさが本編の根底にあります。
士農工商の別は、ご存じの通りですが、「士」の中にあっても上士・中士と下士との間には制度上・意識上の大きな懸隔がありました。そして長い平和が続き、この身分制度は固定化されていて、よほどのことがない限り、上の身分にUPすることはあり得なかったのですね。
主人公の大滝市郎助は、下士でありながら、剣術は藩の剣術師範の代理が勤まるほどの腕。また武士の嗜みの一つとされた能も藩士の中では随一と言われている。さらに、なかなかのアイディアマンで藩の運営に関する献策にも優れたものがあり、城の石垣の調査・保存については幕府にまで聞こえるほどのグッドアイディアを出し、命ぜられて自らその任務に就いています。
要路の心ある人たちには、有能の士と高く評価され可愛がられてもいるのですが、人は様々、上・中士の中には、家柄しか誇れるものがないのに、己の無能さは棚に上げて市郎助のことを「出る杭」だと快く思わない連中も居る訳です。
代替わりがあり、新藩主の初のお国入りに際して、能を捧げようということになり、メインキャストを狙って自薦他薦の藩士たちが色々策動したりするのですが、大方の予想に反して市郎助が選ばれます。
身分の低い自分が上・中士をさしおいて、と常から控えめな市郎助は固辞するのですが許されず、仕方なく主役を受けて稽古に励みます。
そして、藩主の御前での演能が始まります。
演目は道成寺。
鐘の中で般若の面を付けて変身しなきゃいけないのに、開演前に確認した面がないっ。
奴等の仕業だっ。しかし、この際なんとかしなければ。
市郎助は万やむを得ず自分の指を噛み切り、流れる血で隈取りして鬼化した顔を見せたのだった。
表紙の赤いのは、血なんです。
なんともすさまじいものですね。
傷が癒えた市郎助は首謀者のうち二人を斬って脱藩します。
そして数年が経ち、首謀者の残りの二人は丹波篠山藩京屋敷の要職に転勤してきます。
奈良で雌伏していた市郎助は風の便りでそのことを知り、復讐の仕上げに入るのだった。
彼の剣の腕を以てすれば彼らを斬り殺すのは造作もないことだが、それでは彼の宿怨は晴れない。
死ぬより苦しい思いをさせなければかれの気持ちは収まるものではない。
どんなやり方で市郎助は復讐を遂げるのか?
がんじがらみの身分制度。やりきれないですね。
現代日本にも陰では厳として身分制度が存在すると思っています。
しかし普段は、そんなことを考えずにフツーに暮らしていける。
江戸時代よりは、まぁいい社会だ、くらいに思いましょうか。
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澤田ふじ子「土御門家・陰陽事件簿シリーズ」
http://amamori.exblog.jp/5093989/
2007-04-05T00:35:00+09:00
2007-06-25T21:13:40+09:00
2007-04-05T00:35:31+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
「大盗の夜」 2004.11
光文社文庫・刊 ¥650
今度は、江戸時代の陰陽師(おんみょうじ)が活躍します。
安倍晴明を家祖とする陰陽頭(おんみょうのかみ)・土御門家は、寛政3年、幕府から朱印状を授けられ、全国の陰陽師(おんみょうじ) 支配を許された。俗に易者と言われる陰陽師たちに、職札(ライセンス)を交付するなどの権利を得たわけです。
同家を支えるのは、晴明が使ったとされる十二の式神に因んだ譜代陰陽師の十二家。
この譜代衆たちが触れ頭(ふれがしら)として全国の陰陽師を指揮監督して査察して歩いていたんです。
澤田サンの他のシリーズ同様、また珍しい職業の人間が主役を勤めまする。
主人公は笠松平九郎。譜代衆の一人として京都触れ頭の一人を勤めています。
帯刀人で剣技は相当なもの。
京で陰陽師として生業をたてる易者、人相見などの占い師たちを統括する役目を果たしつつ自身も四条小橋西で辻占いをしつつ、民情を探ったりするのです。
お約束通り、京都東西町奉行所とも連絡を取り合っています。
この平九郎が、陰陽師がらみの色んな事件を解決していくシリーズ物なんです。
「鴉婆(からすばば)」 2005.11 光文社文庫・刊 ¥650
全国の陰陽師(おんみょうじ)支配を許された土御門家に、服さない一派がありました。
大黒党(家)といって、土御門家の全国支配に異を唱える陰陽師たちも存在したのですね。
土御門家は代々の家職として禁裏の陰陽道を司ってきた訳ですが、大黒党も地下官人(じげかんじん)として洛西・西院村に三石の領地を賜り、院御所に参仕して左義長役を勤めたりしていることが、その根拠なんです。
左義長とは、ご案内のように、正月十五日に行われる悪鬼祓いの行事。庭に青竹を束ねて立て、それに扇子や短冊などを結びつけ、陰陽師が歌い唱して焼くもの。
この第二巻では、大黒党の連中が現れて、色々と絡まり合いながら、結局は笠松平九郎とともに事件の解決に当たって行くわけです。
沢田ふじ子サン]]>
澤田ふじ子「祇園社神灯事件簿」シリーズ
http://amamori.exblog.jp/5043110/
2007-03-27T23:57:00+09:00
2007-04-09T01:53:52+09:00
2007-03-27T23:57:49+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
祇園社神灯目付役 とは?
祇園社神灯目付役(しんとう・めつけやく)というのは祇園社(現・八坂神社)の神職の一つです。お火役とも呼ばれます。
ルーティンワークとしては、祇園社及びお旅所等関連施設の灯明・灯火の管理ですね。
もっと大事な任務は、祇園社の警固、関連施設の見回り、そして京都所司代、東西町奉行所、禁裏お付き武士たちとも連絡を取り合い、協力し合って洛内の治安維持に当たることです。
異様な服装をしており、赤漆で祇園社神灯目付役と書かれた塗り傘を被り、面垂れ(灯明等に息がかからぬよう)を付け、業務を果たすのだが、祇園社内のみならず、関連施設へ行くため市中を歩く時も、このまままなので、夜など、その姿を見た者はギョッと驚いたという。
祇園社への信仰心と、神灯目付役には手練れの者が就くところから、市民からは畏怖されていたようだ。
さて、本シリーズの主人公は、植松頼助(うえまつ・よりすけ)。従三位左中将植松雅久の庶出の息子。色好みの父が町屋の娘に生ませたものだが、正室である継母に疎まれ外へ出される。さらに刺客を向けられたが、機転でうまく逃れられた。
この刺客が村国惣十郎で、今は頼助の後見役となっている。刺客として頼助を殺しに来たのに、何故後見役に?
知りたい方は、本書のどの巻でもいいから一読下さい。
この村国惣十郎、馬庭念流の達人で、頼助は彼から教えを受け、今や師匠をしのぐ腕になっている。頼助の暗殺に失敗した原因となったトラブルで、ほとんど盲目状態だが、目が見えない分、心気の働きは常人より遙かに優れ、日常生活でも武闘においてもなんの不都合もない。
さらに相役で孫市という中年男がいます。不思議な体術が使え、吉岡流小太刀もよくする。母が実松家領の出なので、頼助には主従の礼をとっている。
この二人が、若い頼助を助け、あるいはアドヴァイスをして、様々な事件を解決していくというシリーズです。
澤田さんの他のシリーズ同様、珍しい職業の人間が主人公で、舞台も京都。京洛の地名、名所、市井の人々の暮らし、季節の移ろいなどがちりばめられ、小説を楽しみながら”京”に詳しくなる(筈)という洵に結構な本と言えます。
中公文庫で出ている第3巻まで読了しました。
今は、「土御門陰陽師シリーズ」を読んでいます。]]>
澤田ふじ子「足引き寺シリーズ」
http://amamori.exblog.jp/4978946/
2007-03-18T00:26:00+09:00
2007-04-09T01:54:04+09:00
2007-03-18T00:26:54+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
足引き寺閻魔帳シリーズ
これも澤田ふじ子さんの人気シリーズです。
澤田さんは、足引き寺の実在を信じておられるようです。
やはり京が舞台です。
京・堺町綾小路に名前ばかりのお堂を構える地蔵寺の住職・宗徳、西町奉行所同心の蓮根左仲、左仲の手下(てか)で十手を預かっていて普段は羅宇屋の格好で町廻りをしている与惣次、扇絵師のお琳、そして宗徳の飼い犬、豪が本シリーズの主人公たち。
足引き寺とは、足を引っ張るーーつまり対象の不都合になることをやるーー極端な場合は殺すーーそういうことを叶えてくれる寺があると京の人々は信じていた。
ほかにもあるかもしれないが、この地蔵寺は、まさしく足引き寺だった。
澤田版「必殺仕掛け人」と言ってもよいでしょう。
他人にさまざまな恨みや辛みを心に抱く人は多い。不正や自分の手に負えない相手に、こっそり誅伐を加えてくれないものかとの願望が<足引き寺>を実在のものとさせたのだ。
ただ、彼らは心底正義感に溢れた者達で、寺の賽銭箱に入れられた願文の、足引きの内容によっては、ロハでも仕事をするし、たとえ十両の金が添えられていても、”正義”がなければ動かない。
しかし、やる時は断固としてやり、達成率、成功率は100%。
宗徳は、京都西町奉行所与力黒田長兵衛の次男として生まれ、本名は小十郎といった。蓮根左仲とは同年の幼馴染みで、二人とも二条城城番衆の桃田市郎右衛門について柳生新影流を学び、京都在勤数百人の武士達のなかではトップクラスの遣い手と言われるようになった。
しかしある時、北野新地の遊女を足抜きさせた時にヒモの男に瀕死の重傷を負わせたことがバレ、十年の遠島に処せられた。無事に帰京した小十郎は、知恩院の末寺で檀家が一軒もないような地蔵寺の住職とされ、兄からの影扶持と本山からの極小な手当を貰って暮らしている。
お琳は、美濃大垣藩浪人の娘で一度上京(かみぎょう)の表具師に嫁いだが、一子を設けたあと、夫が不幸な死に方をし、その際の処理に不満を抱いて仲間になった。吉岡流小太刀の名手。東洞院蛸薬師で町絵師をしている。本シリーズの巻が進むにつれ、宗徳に思いを寄せるようになり、ついには恋人となる。
左仲には、お貴和といって、四条の旅籠・枡屋の養女分になる綺麗な恋人がいて、公認の仲。桝屋の主人、お貴和の養父などは、左仲が奉行所を辞して、彼女と正式に一緒になって旅籠を継いでくれることを期待しているほどだ。
紀州犬の”豪”は、人語を解し、京都弁で考える不思議な犬。連絡係や尾行係を務めたりするほか、足引きのケースを嗅ぎつけて来たりもする実に賢い犬だ。一度、手練れの武士に切り刻まれるが、後、見事復讐を果たす。
こういう四人と一匹の”足引き”の事件簿が本シリーズで、文庫本が出ている5巻まで読了しました
以前UPした「公事宿シリーズ」「禁裏御付武士シリーズ」 、先日読了した「祇園社神灯シリーズ」。いずれも、どの巻の、どの篇からでも読むことが出来ます♪
出演者、状況等が必ず説明されているからです。
澤田サンの小説の特徴は、
①京都が舞台
②誰も使わなかった職業の人物を起用している
③完璧な勧善懲悪
④著者は人間が好きらしい etc
騙されたと思って、お暇があったら、一度澤田ふじ子サン、囓ってみてください。]]>
澤田ふじ子「禁裏御付武士事件簿」シリーズ
http://amamori.exblog.jp/4883543/
2007-03-04T09:57:00+09:00
2007-04-09T01:54:16+09:00
2007-03-04T09:57:44+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
澤田ふじ子「禁裏御付武士事件簿」
これも京都を舞台とした人気シリーズの一つです。
「公事宿シリーズ」と同じく”捕物帖”の一種ですが、これまでのものと違うところは、町奉行所の同心(例:むっつり右門etc)や目明かし・岡っ引き(半七、銭形平次、黒門町の伝七etc)が主人公ではなくて、誰も採り上げなかった職種?の男達を登場させていることですね。
さて禁裏御付武士とは?
徳川幕府は、二代将軍秀忠の頃から、朝廷を内部から監視するため、忍びの技を持つ伊賀衆や根来衆を京に配置していた。
特命を帯びて、朝廷の内部に派遣された伊賀衆や根来衆たちは、京都所司代経由で、朝廷内部の出来事、公家の生活、京の町の様子を、江戸幕府に細かく報告していた。
幕府は、それらの情報によって対朝廷政策を立案していたのだ。
江戸幕府では彼らのことを「禁裏付き」と呼んでいたが、朝廷側では「御付武士」と言っていた。
主人公は、久隅平八という同心格の男。普段は六尺棒を持って仙洞御所の門番をしている。
出来るだけ、阿呆で呑気そうな顔で立ち番するのがコツ。ぼお~として、人の良い門番を装い、公家達の出入りをしっかり監視している。もとより忍びの技に長け、剣の達人でもある。
平八の任務は、禁裏御料地と公家の家領のいくつかを査察すること、京都所司代や町奉行の手先役となって洛中洛外の秩序維持に務め、併せて堂上公家たちの動きに目を配ること・・・の三つであった。
門で立ち番をする勤務が終わるとオフで、さぁゴルフでも行こう、なんてことはなく、色んな職業に身をやつして京の市中を見回って歩くのだ。これを「市歩き」と称している。平八は、奈良の薬売りに化けて、町中の情報を集めている。
そんな中で、「事件」を嗅ぎつけ密かに処理する仕事の記録が本シリーズなんです。
「公事宿」の菊太郎が、お信という佳い女子と公私ともに夫婦同然の仲であるように、平八も、四条高瀬川筋の旅籠「若狭屋」の娘・お菊と割ない仲になっていて、時に若狭屋の離れで体を重ねている。お菊の父・若狭屋弥兵衛公認の仲。
若狭屋は「市隠いちかくし」といって、使命を秘して市中に埋没し、やはり情報収集にあたるもので、平八は「市歩き」をするときは、ここを拠点にしている。いわば前進基地みたいな存在だ。だから平八と、お菊は一種のオフィス・ラブなんでしょうね。
一冊に、6~7篇所収。 このシリーズも完読しようと思っています。]]>
澤田ふじ子「公事宿」シリーズ 7~11
http://amamori.exblog.jp/4812406/
2007-02-23T12:54:00+09:00
2007-04-09T01:54:30+09:00
2007-02-23T12:54:35+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
15年以上に亘る人気シリーズ。
いまなお継続中です。
著者遠?影
著者近影
公事宿とは、宿泊施設を備えた法律事務所のようなものですね。
江戸時代でも現代と同様、一般庶民にとって、訴訟手続きは面倒なものでした。
だから公事宿に依頼して裁判にかけたんですね。
また遠方からの客のために、宿泊施設を用意するのは当然のことでした。勿論賄い付きです。
江戸は馬食町、大坂は谷町、そして澤田サンの殆どの小説の舞台である京都は、二条城南の大宮通り界隈に固まっていました。
公事宿が扱うのは、主として<出入物(でいりもの)>つまり民事訴訟です。
原告が、目安(訴状)で相手を訴え、町奉行が相手を白州に呼び出して返答書を提出させ、対決(口頭弁論)と糾(ただしーー審理)を重ねた結果、裁許(判決)を下す・・・こういう流れなんですね。
これは素人には無理です。やはり司法に詳しい専門家に頼まなければなりません。
公事宿は必要なシステムでした。
登場人物その他の設定はコチラをご覧ください。
公事宿事件書留帳 7 にたり地蔵
公事宿事件書留帳 8 恵比寿町火事
公事宿事件書留帳 9 悪い棺
公事宿事件書留帳10 釈迦の女
公事宿事件書留帳11 無頼の絵師
文庫本が出ている第11巻まで読了しました。
単行本は第14巻まで出ているそうです。
息の長い人気シリーズだということがよく分かりますね♪
どこから読んでも楽しめますが、主人公・菊太郎の弟にも子供が生まれたり、恋人お信の娘・お清が寺子屋に通い出したり・・・物語の中にも時の流れはあります。
第10巻では、菊太郎とは夫婦同然と公私ともに認められているお信が、料亭を辞め、「美濃屋という団子屋」を開いています。
このシリーズ、ずうう~っと書き継いでいって貰いたいと願っています♪]]>
澤田ふじ子「公事宿」シリーズ 1~6
http://amamori.exblog.jp/4724981/
2007-02-12T17:24:00+09:00
2007-04-09T01:54:43+09:00
2007-02-12T17:24:51+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
澤田ふじ子 『公事宿』シリーズ
完読目指して頑張っています。
公事宿事件書留帳 1 闇の掟
公事宿事件書留帳 2 木戸の椿
公事宿事件書留帳 3 拷問蔵
公事宿事件書留帳 4 奈落の水
公事宿事件書留帳 5 背中の髑髏
公事宿事件書留帳 6 ひとでなし
公事宿とは、宿泊施設を備えた法律事務所のようなものですね。
江戸時代でも現代と同様、一般庶民にとって、訴訟手続きは面倒なものでした。
だから公事宿に依頼して裁判にかけたんですね。
また遠方からの客のために、宿泊施設を用意するのは当然のことでした。勿論賄い付きです。
江戸は馬食町、大坂は谷町、そして澤田サンの殆どの小説の舞台である京都は、二条城南の大宮通り界隈に固まっていました。
公事宿が扱うのは、主として<出入物(でいりもの)>つまり民事訴訟です。
原告が、目安(訴状)で相手を訴え、町奉行が相手を白州に呼び出して返答書を提出させ、対決(口頭弁論)と糾(ただしーー審理)を重ねた結果、裁許(判決)を下す・・・こういう流れなんですね。
これは素人には無理です。やはり司法に詳しい専門家に頼まなければなりません。
公事宿は必要なシステムでした。
なお、<吟味物(ぎんみもの)>といって刑事訴訟事件もありましたが、これも現代同様、町奉行が捕らえて(実際にはby目明かしや同心等)断罪するものです。
さて、『公事宿事件書留帳』は澤田サンの人気シリーズの一つで11巻以上出ています。
各巻には7篇ほどが所収されており、それぞれ独立した短編なのでどこからでも読めるんです。現に私は図書館のリサイクル本からgetした第9巻『悪い棺』(UP済み)が、本シリーズとの初見参で、次いで第6巻『ろくでなし』を読了していますが、やはり”時の流れ”というものがあり、主人公達も年齢を加えるし、人間関係も進化しているので、これはやはり最初から読まないといけないと思い幻冬舎文庫をまとめて手に取りました。
文庫本の帯でも分かりますが、NHK木曜時代劇で『新はんなり菊太郎』というのが放映されています。
『新』とあるように、二期目なんでしょうね。一期目のことは全く知りませんでしたし、二期目も、たまたま見かけて、あれっ、どこかで聞いたような話だなぁっと観ているうちに気がついた訳です。
しかし、主人公の田村菊太郎を内藤剛志さんが演ってますが、原作のイメージとは違っていて、「華麗なる一族」におけるキムタク同様、私には明らかなミスキャスト、二度と観ようとは思いません。
原作の菊太郎は、30前、色白でスラリとして一見公家に仕える青侍風。敢えて言えば、東山クンあたりが好ましいですね。内藤剛志さんにゃ悪いが、あんなに脂っぽくないし、もっと若々しい。それに、TVでは、三枚目風の演出になってましたが、実物はもっとクールでニヒル・・・です。
田村菊太郎は京・東町奉行所同心組頭の長男に生まれ、神童の名を恣に成長したが、自分が嫡出ではなく、堅い筈の父・次右衛門が茶屋の女に生ませたことを知るや、正しく生まれた弟・銕蔵に家督を継がせるため、放蕩を始め、諸国流浪の旅に出てしまう。
銕蔵が無事家督を継ぎ、同心組頭の仕事を立派にこなすようになった頃、菊太郎は京に戻り、父・次右衛門が世話をして開業させた公事宿・鯉屋の居候となった。
鯉屋の当主は二代目の源十郎、お店様(女房)のお多佳とともに、菊太郎には主従のように仕えている。だから居候とは言え、菊太郎は大威張りで悠々と暮らしているし、小遣いにも全く不自由はない。
この菊太郎、他人には居候だと称しているが、実質的には、腕のたつ顧問みたいな存在で、鯉屋に持ち込まれる公事で、通常の事務処理で済む案件には関与しないが、少しでも「おかしい」と感じられる事件には、自発的に、あるいは源十郎や銕蔵に懇望されてコミットするのが常だ。
類い希な推理力と、世間を見てきたために養われた人情の機微を見抜く目で以って、すべての事件を解決し続けるのだ。
その実績で、京都所司代や町奉行から高禄で召し抱えたいと言ってきても、にべもなく断る菊太郎だった。宮仕えを快しとしないタイプなんですね。
第1巻の初めの方には出て来ないが、徐々にチョイ役(料亭の仲居)で出てきて、そのうち名前も出るようになり、遂に菊太郎と恋人同士になるお信。お清という子持ちで前夫とは生き別れ、つまりバツイチ女です。彼女とはお互いに結婚する気持ちになるくらい深く愛し合っているのに、諸般の都合で、第6巻に至るも、まだ恋人なんです。
澤田サンの他の人気シリーズに久隅平八が主人公の『禁裏御付武士事件簿』というのがありますが、本シリーズにも協力者として、御付武士の赤松が時々客演します。
あと、公事宿・鯉屋の下代(番頭)・吉左衛門、手代の喜六、丁稚、小僧、下女などがレギュラーメンバーです。
江戸時代特有の事件もありますが、汚職・誘拐など現代の事件も巧みに同時代のもとして取り入れられています。いつの時代も”色と欲”は人間には付いて回るものなんですね。
完読するところまで、行くつもり・・・です。
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澤田ふじ子「宗旦狐」ほか
http://amamori.exblog.jp/4588628/
2007-01-19T18:29:00+09:00
2007-04-09T01:54:57+09:00
2007-01-19T18:29:26+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
この年末年始、澤田ふじ子サンの本を数冊getしたので集中的に読みました。
澤田ふじ子「宗旦狐」 2003.3 徳間書店・刊 ¥1,785
サブタイトルにもあるように「茶湯にかかわる十二の短編」が収められています。
各篇のタイトルもなんか趣があるので掲出してみます。
蓬莱の雪、幾世の椿、御嶽の茶碗、地蔵堂茶水、戦国残照、壷中の天居、大盗の籠、宗旦狐、中秋十五日、短日(みじかび)の霜、愛宕の剣、師走の書状
&仲冬の月
千宗旦は利休の孫で、彼の息子たちが三千家・・・表、裏、武者小路・・・の祖となっています。
参考書 千利休事典 2000.7 世界文化社・刊 ¥1,490
表題作「宗旦狐」は、宗旦に化けた狐が、欲張りの筆屋を騙す話。面白い。
仲冬の月は「利休七哲」所収。 1990.3 講談社・刊 ¥1,400
ついでにご紹介しておきましょうか。
古田織部:落梅記 黒部 亨
瀬田掃部:仲冬の月 澤田ふじ子
細川三斎:休無・細川忠隆の遺書 左方郁子
蒲生氏郷:数奇者大名 邦光史郎
芝山監物:こぼれ咲き 百瀬明治
高山右近
:余情残心 加来耕三
牧村兵部
荒木村重:道糞流伝 神坂次郎
知り合いがUPしています。興味のある方、ご覧下さい。
「王事の悪徒」 2003,1 徳間書店・刊 ¥1,785
四十歳前後の老娼ばかりを狙った無惨な絞殺死体が連続してみつかるという事件が起きている。
江戸では夜鷹と呼ぶが、ここ京では辻立ち女、辻君、夜餅、夜桜、夜鶴などと呼ばれるストリート・ガールだ。
特徴として、絞め殺した上、胸乳と下半身をさらけ出させ、秘所の黒い草むらの上に、三枚の笹の葉を残すこと・・・・(蜘蛛の糸)
サブタイトルが「禁裏御付武士事件簿」とあるように、幕府の特命をおびて、禁裏・仙洞御所の警備を名目とする伊賀、根来衆で、ルーティンワークとしては門の警備などに当たるが、オフには朝廷の内部や京都の情報を探る役目の武士たちのこと、いわば隠し目付の事件簿。
主人公は久隅平八。奈良の生薬売りに身をやつして京の街々を歩き回り情報収集にあたる。
商人宿の若狭屋を定宿とし、娘のお菊とは恋人同士だが、主の若狭屋もスリーピング・エイジェントだ。
人気シリーズで、本書が3冊目です。
蜘蛛の糸、印地の大将、王事の悪徒、やまとたける、左の腕、呪いの石 6篇を所収。
「いのちの蛍」 2000.2 新潮社・刊 ¥1,470
元尾張藩士だが訳あって今は、京・木屋町筋から東の先斗町通りに抜ける小路の角で”尾張屋”という居酒屋の主となっている宗因の活躍を描く連作。
各篇名が、また趣深い。
夜の黒髪、短夜の蓮、秋陰の客、背中の影、討たれの桜、いのちの蛍、流れの蕪村、夜寒の船。
サブタイトルは「高瀬川女船歌」。
宗因の亡き京都妻は、元高瀬舟の女船頭で、当時の仲間の女船頭や(男)船頭とのつきあいが続き、その関係で、市井の事件に関わっていく。
正義感あふれるその活躍ぶりは、いっそ痛快である。
「雁の橋」 2003.1 幻冬社・刊 ¥1,680
豊臣家のご落胤か?
とんでもない物語が始まる。
丹波篠山藩小栗頼母一家は、「囲み討ち」に遭う。仕えて5~6代になるが、長男は必ず廃嫡され、次男が家督を嗣ぐという奇妙なことを繰り返して来たのだが、ここへ来て”噂”が大きくなり幕府に知られる前に抹殺されてしまったのだ。
事前に逃れた嫡男雅楽助は伯父を頼って能登に向かう途中、藩の刺客に襲われるが仙人のような風貌の木屋権左衛門に拾われ、彼の故郷山中温泉で弟子として暮らすことになった。
権左衛門は、京で盛業中の炭問屋の主だったが、師範代クラスの地位にあった池坊を、異端として破門されたのを機に新流派を起こすべく、店を番頭に与え、放浪中だった。
立花師として修行中の雅楽助に刺客は迫っているのか?
また権左衛門の才能、実力、名声を恐れた池坊からも、刺客は放たれているのか?
かくして十年が経ち、立派な若者となった雅楽助の前に開かれる運命的な結末は?
澤田ふじ子 「もどり橋」1990/4 中央公論社 刊 ¥1450
上嵯峨野村の貧農の娘、お菊(本編のヒロイン)は三条東洞院の料理茶屋・末広屋に15の年に奉公に出される。
板場には、追い回し、立ち回りなどという下級の料理人見習いの若者が何人もいた。
ほとんどが貧乏人の倅達だが、中には京一番の料理茶屋の息子や、伏見の船宿の息子、大垣藩・賄い方(士分)の嫡男もいる。 いずれも京料理を会得して将来何者かになりたいという希望をもって働いている。
これは、京の一流料理店で働く若者達の青春群像を語った物語である。
タイトルの「もどり橋」は、堀川にかかっているが、この一条もどり橋は古代から中世にかけて京城の境とか、この世とあの世の境とか謂われたほか、橋占い、罪人をさらす所としても用いられている。
人生において、後戻り出来る者、戻れなくなってしまった者。十代から二十代初にかけての数年間で、早くも戻れなくなってしまった者がいた。
色々なエピソードをかさねながら、お菊の成長をも見事に描いた佳編です。
料理茶屋が舞台なだけに、数々の料理が出てきますが、澤田ふじ子サンの、料理に関する見識というものがよく出ている部分を抜粋してみました。
一流の料理は微妙なものを持っている。
末広屋では、奉公人たちの健康をなにより案じていた。調理場で働く人々が体を悪くしていれば、どんな材料もうまく料理できない。体調を悪くしている板場には、良い味がだせないというのである。・・・・・
どんなに立派で高価な材料で料理しても、真心がこもっていなければ、それは良い味をださない。一見、材料は雑でも、真心をこめた料理は、良い味をあらわす。現代でも一流料理屋の味が、ときに魅力がないのはそこの所だろう。
昔の人々は、一粒の米、わずかな品物でも大切にしてきた。それはものが豊かでなかったからでもあるが、すべての物に霊がやどると考え、感謝の心を抱いていたからでもある。
人間は物の命を食べて生きている。牛や豚でも、魚、鶏、野菜でも死にたくはなかろう。人間はそれらの命を頂き、今を生かされている。食べ物を粗末にする行為は、命を粗末にすることであり、自然の摂理に反する行為となる。
グルメとは、日本でいえば食通を指す言葉だろうが、節度なくおいしい食べ物をもとめ、それにむらがる人々に、人間的卑しさと知性の欠如を感じる。そこに人として鼻持ちならない奢りや虚栄、また刹那的な享楽の姿をみるからである。・・・・・
本当に味がわかるのは、食通とかグルメとかいわれる人たちではない。物の命を尊び、きちんと食べるそんな人こそ、味に対して鋭い感覚を持っており、奇妙なことに味覚は美的感覚を養うのに最も適する不思議をそなえている。
澤田ふじ子サン、面白いですよ。請け合いです♪
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悪い棺 澤田ふじ子
http://amamori.exblog.jp/3132735/
2006-05-24T22:38:00+09:00
2007-04-09T01:55:09+09:00
2006-05-24T22:39:02+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
2003.12 幻冬社・刊 ¥1,680 06.5.24 了
御所八幡町の米屋・松野屋から出た立派な葬列の、金襴をかぶせられた、お棺にいきなり石が投げつけられた。最初に投げたのは修平という小童。あとにばらばらと見物人の中から投石が続いた・・・
表題作の「悪い棺」以下、釣瓶の髪、人喰みの店、黒猫の婆、お婆の定法、冬の蝶 6篇所収。
サブタイトルが《公事宿事件書留帳》
公事宿とは、宿泊施設付きの弁護士事務所みたいな存在です。
公事とは、訴訟、裁判のことですね。
これは公事宿「鯉屋」が関わった色々な事件を中心に京都の市井の人々を描いたシリーズ物で本書が9冊目だそうです。
主演は、京都東町奉行所同心組頭の家の長男に生まれながら、妾腹だったため、嫡出の腹違いの弟に家督を譲ろうとして出奔した過去を持つ田村菊太郎で、公事宿「鯉屋」に、大威張りで居候しながら数々の事件を解決していきます。
事件といっても、本書に限っては、刑事より民事の方が圧倒的に多いようです。
「鯉屋」の構成メンバーは、主人が源十郎、女房のお多佳は、お店(たな)様と呼ばれる。下代(げだい)--番頭の吉左衛門、手代の喜六、丁稚の正太、鶴太、小女のお与根がいます。
菊太郎の腹違いの弟で、京都東町奉行所同心組頭の田村銕蔵や部下の同心達数名もレギュラーメンバーです。
お信という、関係者公認の、菊太郎の恋人も出ます。夫に蒸発され料理屋で仲居をしながら一人娘の、お清を育てています。菊太郎も時々、お信の長屋に泊まりに行ってます。
なんとなく平岩弓枝サンの「御宿かわせみ」を連想させられますね。
ただ「かわせみ」が、陰惨な、殺伐とした事件が多い印象を持つのに対して、こちらの方は、殺人事件など起きないし、あくまで民間レベルで解決できる事件を扱っている・・・という違いがあります。
いずれも見事なハッピーエンドになる解決の仕方。第1巻~8巻も読みたくなりました。]]>
花籠の櫛 澤田ふじ子
http://amamori.exblog.jp/3132531/
2006-05-24T22:01:00+09:00
2007-04-09T01:55:22+09:00
2006-05-24T22:02:01+09:00
amamori120
澤田ふじ子を読む
2004.6 徳間書店・刊 ¥1,765 06.5.18 了
幕末の頃まで、祖先が京都に住んでいたという澤田ふじ子サンの連作短編集です。
サブタイトルは《京都市井図絵》です。
☆辛い関
☆花籠の櫛
☆扇の蓮
☆夜寒の釜
☆雪の鴉
☆色鏡因果の茶屋
☆雨月 この7篇が所収されています。
それぞれが独立した短編ですが、何組かの市井の人間達が、ちょこっとずつ関連・連鎖しています。
舞台は京都(一部大津)です。
千家十職の一つ、三条釜座(かまんざ)の大西家で、茶釜をこしらえている佐兵衛と、大津の親戚がやっている材木屋にこき使われている娘のお八重。
大津代官所の惣元締め(No.2)沖宗弥兵衛と息子の芳之助。
錦町市場の大店で川魚問屋の入り婿でありながら親戚にいびりだされて瀬戸物を焼いている藤吉と、その娘で、蕎麦屋で働くお伊那。
その働きぶりを見て、お伊那を息子の嫁にと懇望している豪商・太兵衛・お登世夫婦。
彦根藩をクビになった横井惣右衛門の次男で、円山応挙に弟子入りして画家たらんとする野心的な安民。彼を世に出そうと料亭の仲居をして養っているお志乃。食わせて貰っているのに、大店の娘に惚れられたのをいいことに入り婿になろうと狙う不埒な安民。
藤吉の弟で、一時グレていて、押し込み強盗の見張り番を一度したが、改心して真人間になろうと懸命の民吉。
大津の川魚問屋の尻軽娘で、許嫁がいるのに、大津代官所の下役・中村彦四郎と駆け落ちしたお富。
彼(女)らが、少しずつ絡み合いながら、ドラマティックなエピソードを挿みつつ物語は進み、あり得べき大団円を迎えます。
京都の市井の人々の物語なので、当たり前ながら、会話は実に柔らかい京都弁でなされ、関西出身の私はホッとすることが多いです。
あとがきに、「他府県にくらべると人の移動が少ないのが京都の特徴の一つである。」と著者は書いています。
「人に謂われなく物を貰うな」「人の話に口を挟むな」「人と決定的な諍いを起こすな」という三つの戒めを祖先から受け継いだというが「人口流動の少ない京都で生きてきた人ならではの教えだ。」と著者は思っているとのことです。
人をそらさない京都人の本質をよくついているようです。]]>
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