佐伯泰英「聖女の月」

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この人の”海外物”は定評があります。今回はスペインと日本が舞台です。敢えてネタバレ的記述をしますが、それでもなお面白く読める本です。
聖女(マリア様)の月とは5月のことだそうです。
この月に生まれた、たぐいまれな美貌の持ち主薫子がヒロインです。彼女はフラメンコに魅せられ、その頂点を目指します。元々クラシックバレーをやっていた彼女は、スペイン国立バレー団の公演でフラメンコを観て
「魂を鷲掴みにされていた。全身が総毛立ち、背中から官能的な喜びが波状的に襲ってきて、強い衝撃を受けた。」
薫子にとって「フラメンコは饒舌であり、かつ寡黙な踊りだった。原色の華やかさをもちながら、同時に淡彩の渋みもあった。フラメンコはクラシックバレーより性悪な魅力を秘めていた。」
こうして薫子はフラメンコダンサーの道を歩き始めます。世界的な画商で日本でも業界のトップクラスの人物が愛人・パトロン・教育者になってくれて薫子はダンスに専念することができるようになる・・・
彼女は、或るトラブルの手先に使ったチンピラを殺害し、パトロンをも合意の上で裏切って破滅に追いやり、巨額の金を手にしてスペインに渡る。
スペインで、フラメンコの神様と言われた幻の舞踊家コキリを苦労して探し出し、認められて、その弟子となることが出来た。そして4年もの間、すべてを犠牲にして血を吐くような練習を続け、グラナダで行われる国際舞踊コンクールでフラメンコの女王となり、併せてグランプリをも獲得する。グラナダ財界トップで貴族の御曹司と結婚、プリンセサ・アロマ・カオルコ・アリマ・デ・ダンソとなる。ドガの三分割された名画が、一つになるサイドストーリーも効果的に使われ、サスペンスを盛り上げていく。
この一つになった名画の公開と併せ、カオルコの日本公演が決まり、彼女は夫やスタッフ達と日本に凱旋する。ところが、4年前のパトロンの破滅→自殺の原因に関心と疑念を抱いていた田舎刑事と、チンピラの一見事故死に納得していなかった横浜の刑事が一緒になって、カオルコに追究の手が伸びる・・・
                               05.6.7読了
by amamori120 | 2005-06-08 12:09 | 読後感・本の紹介