「落日の王子 蘇我入鹿」
2008年 05月 27日黒岩重吾・著 1982.5 文藝春秋・刊 1,300
晩年は古代史に材を取った作品の目立つ黒岩重吾サンの傑作です。
皆さん、よくご存じ「大化の改新」の主要人物の一人、蘇我入鹿の半生を描いたものですね。
父の蝦夷は大臣(おおおみ)として政治権力を独り占めし、息の入鹿も閣僚として父に次ぐ権力を振るっています。父は蘇我本宗家が今のままの状態で満足しているのですが、入鹿はさらに、大王(おおきみ)家を越える存在にならんとする野心を秘めているんです。現実の政治は蘇我本宗家の思いのままなんですが、祭祀の権を持つ大王(おおきみ)家よりは格下と見られているのが我慢ならないんです。
手始めに聖徳太子の息で大王位に即かんとしている山背大兄皇子を滅ぼし、夫の舒明天皇亡き後、皇位についた皇極天皇と恋人になり、子も成し、着々と野望の実現に向けて手を打って行きます。
しかし、大氏族の蘇我氏は割れており、本宗家の権力独占を憎む支族の存在と、唐からの帰朝学僧たちからの新知識を学んだ中臣鎌子ら中堅官人そして皇極天皇の息、中大兄皇子らは、入鹿の野心に気が付き、それを阻止せんとします。。。。。。
さすがに手練れの小説家。誰もが知っているこの事件を、とても新鮮に再現してくれました。