康熙帝 間野潜龍

康熙帝 間野潜龍_d0065324_22323857.jpg康熙帝 間野潜龍・著 昭和42年11月 人物往来社・刊 ¥490

清朝第四代皇帝・聖祖康熙帝の一生を、その事績を中心に描いた書です。









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政治、軍事、文事において卓越した手腕を発揮して大清帝国を完成させた康熙帝ですが、著者は「大帝」、「聖祖」と持ち上げっぱなしではなく、人間的な側面も描き出していて、一読大抵の読者は彼に好感を抱くでしょう。それは次のような事実からも窺えますね。

「康熙帝の心の中には、満州族出身の皇帝という立場と、中国的聖天子たらんという願望・・・この二つの矛盾した心理が常に葛藤して・・・康熙帝は清代のどの君主よりも長期に亘って皇帝の地位にありながら、最も人間的な悩みを持った皇帝ではなかったか・・・」

また、早くに父(順治帝)・母を亡くした康熙帝は祖母の太皇太后の世話を受けて育ったものだから、彼女が死の床にあるとき、「湯薬に侍すること35昼夜に及び、衣帯も解かず、力を尽くし、心を尽くし・・・」看取ったが、亡くなると、康熙帝は「三日間も泣き続け、粥も水も口に入れず、遺骸の棺の傍に座り通して、ついに目もくらみ、血を吐くようなありさまだった」といいます。

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彼の生きた17世紀の同時代人にはフランスのルイ14世、ロシアのピョートル大帝が居て、奇しくも17世紀に三大帝王が出現したことは興味深いですね。
三人とも似た様な境遇---幼くして帝(王)位につき、重臣どもの圧力を撥ねかえして実権を取り戻した---なのは考えてみれば面白いですね。
by amamori120 | 2008-04-23 22:45 | 読後感・本の紹介