「絵画の真生命」 速水御舟
2008年 02月 22日
「絵画の真生命」 速水御舟
1996.8 中央公論美術出版・刊 ¥3,675
この表紙の絵は
名樹散椿(重文)です。

速水御舟(本名 栄一) 明治27年(4894)~昭和10年(1935)
大正~昭和を代表する日本画家ですね。
腸チフスを患って一ト月でなくなってしまったそうです。
40才での若死にと、600点余の作品の多くが、公開されず愛好家に所蔵されてしまったので、「幻の画家」と言われたそうですが、昭和51年、山種美術館がまとまった数をgetし、他の所蔵品と併せて展覧会を開いたことから広く知られるようになったとのことです。
さて、本書はそんな速水御舟の「文集」です。
絵のみならず文章もよくした人だったんですね。
内容ですが、<自作について><芸術論・絵画論><先師・交友><回想・紀行><語録>という構成になっています。
<回想・紀行>の中に「慶州石窟庵を見るの記」というのがあるんですが、昭和8年に、朝鮮美術展覧会に招かれた際に、新羅の旧都・慶州の近傍にある石窟庵へ行ってるんですね。
そして「本尊の石像の美しさに魅せられた・・・流麗な手法で作られ、顔の穏雅なことは比類である。私は朝と夕と二度行って心ゆくまで鑑賞の楽しい時を過ごした・・・この石窟庵一ヶ所を見ただけで朝鮮へ来た効果があったと思ふ。」というくらい感激しています。
ここは実は先頃、拙が新羅の狛犬という記事でご紹介したところなんです。
こういう文章に出遭うと嬉しくなるものですねぇ
ところで、心惹かれた断章をいくつかご紹介します。
実在するものは美でも醜でもない。唯真実のみだ。若し我々が確実にその真を掴んだとすれば、そこには美だとか醜だとかと言ふ比較的なものを超えた、より以上の存在を感じなければならない筈だ。或いは夫れをこそ真の美と言ふべきであるかもしれない。 *御舟は、以上の言葉に表わしているように、「真実」や「美」とは何かという一種の美学的命題とその実現に感心を抱いており、それに基づいて作画を行ったようです。
芸術は時代意識の現れになるかもしれない
技法の究極は無色透明だと思ふ。いささかでも他色があれば自己の真意を伝えるのに禍ひとなる。
絵画こそは、概念からいづるものにあらずして、認識の深奥から情熱が燃え上がって、はじめて造り得らるる永遠に美しき生命の花であろう。
梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りてきて、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い。大抵は一度登ればそれで安心してしまふ。そこで腰を据えてしまふ者が多い。
登り得る勇気を持つ者よりも、更に降り得る勇気を持つ者は、真に強い力の把持者である。
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ゲージュツにはとんと無縁の雨漏りですが、本書を通じて、真摯に芸術に生きた一人の優れた先人を発見しました。











