中村汀女「ふるさとの菓子」
2007年 05月 16日
中村汀女「ふるさとの菓子」
2006.9 アドスリー/丸善・刊
¥1,365
風流堂サンの内藤守社長様から贈呈されました♪

俳人・ 中村汀女サンが約130点のお菓子を挙げて、お菓子への熱い思いを、俳句とともに、綴った本です。「婦人朝日」「婦人画報」に連載したものです。
汀女サンの菓子観を少しご紹介してみましょう。
「女にとって菓子とは酒であり、莨(たばこ)であり、そしてひそかな手頃な(?)恋人である・・・・・」
毎日の食事の「その間の、いささかのくつろぎに、菓子のある日とない日とは、こんなにも気持ちに影響するかと思うときがあります。考えて、一つの菓子が待っていてくれる日はたのしい。さて、何ものもない--ということはどの部屋もがらんとした感じに、ほんとにさむざむとわびしいのでした。」
「菓子の季節感、これはもっとも日本のお菓子の魅力ではないでしょうか。よき国ぶりにめぐる四季、恵まれた季節を迎えるよろこびは、まったく大事な菓子に盛るよりほか仕方がないといえるかも知れません。また菓子作る心には殊更によき自然の姿が映るか知れず・・・」
「ほんとに私はただ菓子をたべるたのしみだけで、菓子に対する恋情みたいなものを書きつづって来ていますが・・・」
「茶道を愛する藩主にめぐまれた土地に、いい菓子が生まれ、つくりつづけられて来た・・・逆に菓子が人の心をやしなう・・・」
では中村汀女サンは、我が愛する風流堂サンの銘菓をどのように愛したのでしょうか?
まず、日本三大銘菓の第一、山川 について。
♪秋かやに見るべき夢もなき如く
♪秋のかや月欠けて行く早さかな
きめ細かな落雁地の紅白重ね。桃色は見事。刃物などとても受けつけない固さが、手で気持ちよく割れて、まことにもよき口さばき。しっとりとした生地の甘さに配した適度の塩味、としよりが「塩あんばいがいヽ」といったものだが、甘さを補う塩加減に苦心も誇りもあることと思う。不昧公好みのなうての名菓。こんな明るい桃色を愛でた殿様に私は好感が持てた。


次ぎに、松江名菓 若草。
見た瞬間、あっと言いたい若みどりの鮮やかさ。岩絵具の緑青だ。その固いそぼろに包んだ求肥が玉のような美しさで冷たい甘さがすぐまた口に溶けて、不思議に渇を忘れさせるのだった。湧き出る水に手を浸したときのたのしさがふと思い出されて来たが、これほど春の季感をはっきりさせる菓子も珍しい。気品といい、いずまいといい類の少ない名菓。


♪清水とも菓子をたとふる夜なり恋ふ
最後にこれも定番の 朝汐 です。
・・・性に合ったお菓子は多いようでまた少ないものですが、朝汐は私の性にぴったりでした。
・・・山芋製・・・地小豆を晒しきったという餡は、まったくその感じ、それに私はその塩加減に感心します。小豆餡の香のよさが、朝風のさわやかさほどに残り、一杯の茶が欲しくなる。私の何よりの有り難いひとヽきのようです。・・・
♪砕け散る春の大浪旅立たな


松江はもとより、島根でとりあげられているのは風流堂サンのみ。
また三点も挙げられているのは全国でも風流堂サンだけです。
中村汀女サン、よほど風流堂サンがお気に入りだったようです。
汀女サンのお嬢さん小川濤美子サンが、あとがきに書いています。
・・・最後の入院の頃まで母は「菓子と俳句」を作りつづけた。・・・
転載許可を得てませんが独断でUPします♪


