中村正軏「アリスの消えた日」

中村正軏「アリスの消えた日」_d0065324_19272478.jpg
中村正軌「アリスの消えた日」
1992.7 早川書房・刊  ¥1,500

「元首の謀叛」で80年に直木賞を受賞したこの作家の「貧者の核爆弾」に続く長編第三作です。







中村正軏「アリスの消えた日」_d0065324_19281536.jpg
中村正軏「アリスの消えた日」_d0065324_1929878.jpg

中村正軏「アリスの消えた日」_d0065324_19291815.jpg

中村正軏「アリスの消えた日」_d0065324_19293584.jpg

フランス陸軍の技術将校であるベルナール中佐は、或る国家機密に属する軍事技術情報を欲しがる他国籍犯罪グループに一人娘のアリスを誘拐された。
それはチュニスに本拠があるとされる「カルタゴ結社」の中の「シュテッカ」というグループの仕業だった。

理解ある上司の将官のおかげで誘拐犯との交渉が成立し、いよいよアリスと「情報」の交換という段取りになり、アンヴァリッド(廃兵院  ナポレオンの墓もあります)へ出向くも、手違いが起きて、「交換」は失敗に終わり、一週間後にアリスは死体で発見された。
ベルナール家の隣人で一人暮らしの老婆が居るのだが、これがトンダお節介焼きの、ひきずりで、地元警察に、ベルナール家に異変が起きてるなどと匿名で余計な垂れ込みをし、そっちの線から邪魔が入ったためだった。ホンマに腹の立つ婆ぁです。

妻のサラは、この事件ですっかり精神のバランスを崩し、精神病院に入院する事になってしまった。
ベルナールも軍の仕事を辞め、マダガスカル島の東方に浮かぶレユニオン島(去年家族三人でヴァカンスを過ごした思い出の地だった)で酒浸りの毎日を過ごしていたが、ある日、元の同僚から電話が来て、それは彼をまた軍に復帰する気持ちにさせずにおかない内容だった。

それは、「シュテッカ」を引っかける面白い状況が出て来たということだった。
ネタは、プジョー社が開発に成功した「エンジン吸気濾過システム」。
これを搭載して、パリーダカール・ラリーに出走するプジョーから、この装置を盗みだし、シュタージ(東ドイツ国家保安省)→ソ連KGBという流れの中に介在するシュテッカを炙り出そうというもの。

愛娘の誘拐・殺害から4年。ベルナールの合法的復讐は成るのか?
サラは?

先日、新しい仏大統領が決まりましたが、この当時の大統領ミッテランや首相兼パリ市長のシラクも登場するなど、面白い国際謀略アクション小説に仕上がりました。


ハヤカワ・ミステリーワールドはコチラ
by amamori120 | 2007-05-10 19:33 | 読後感・本の紹介