澤田ふじ子「祇園社神灯事件簿」シリーズ

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祇園社神灯目付役 とは?








祇園社神灯目付役(しんとう・めつけやく)というのは祇園社(現・八坂神社)の神職の一つです。お火役とも呼ばれます。
ルーティンワークとしては、祇園社及びお旅所等関連施設の灯明・灯火の管理ですね。
もっと大事な任務は、祇園社の警固、関連施設の見回り、そして京都所司代、東西町奉行所、禁裏お付き武士たちとも連絡を取り合い、協力し合って洛内の治安維持に当たることです。

異様な服装
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をしており、赤漆で祇園社神灯目付役と書かれた塗り傘を被り、面垂れ(灯明等に息がかからぬよう)を付け、業務を果たすのだが、祇園社内のみならず、関連施設へ行くため市中を歩く時も、このまままなので、夜など、その姿を見た者はギョッと驚いたという。
祇園社への信仰心と、神灯目付役には手練れの者が就くところから、市民からは畏怖されていたようだ。

さて、本シリーズの主人公は、植松頼助(うえまつ・よりすけ)。従三位左中将植松雅久の庶出の息子。色好みの父が町屋の娘に生ませたものだが、正室である継母に疎まれ外へ出される。さらに刺客を向けられたが、機転でうまく逃れられた。
この刺客が村国惣十郎で、今は頼助の後見役となっている。刺客として頼助を殺しに来たのに、何故後見役に?
知りたい方は、本書のどの巻でもいいから一読下さい。
この村国惣十郎、馬庭念流の達人で、頼助は彼から教えを受け、今や師匠をしのぐ腕になっている。頼助の暗殺に失敗した原因となったトラブルで、ほとんど盲目状態だが、目が見えない分、心気の働きは常人より遙かに優れ、日常生活でも武闘においてもなんの不都合もない。
さらに相役で孫市という中年男がいます。不思議な体術が使え、吉岡流小太刀もよくする。母が実松家領の出なので、頼助には主従の礼をとっている。

この二人が、若い頼助を助け、あるいはアドヴァイスをして、様々な事件を解決していくというシリーズです。

澤田さんの他のシリーズ同様、珍しい職業の人間が主人公で、舞台も京都。京洛の地名、名所、市井の人々の暮らし、季節の移ろいなどがちりばめられ、小説を楽しみながら”京”に詳しくなる(筈)という洵に結構な本と言えます。

中公文庫で出ている第3巻まで読了しました。
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今は、「土御門陰陽師シリーズ」を読んでいます。
by amamori120 | 2007-03-27 23:57 | 澤田ふじ子を読む