藤沢たかし 『63歳からのパリ大学留学』
2006年 11月 28日
1984.1 新潮社・刊 ¥1,1001984年1月が初刷で、4月に5刷(本書)ですから、随分よく売れた本なんでしょうね。

著者の藤沢たかしサンは、その祖父が、例の勝海舟陸軍総裁の下、副総裁を務めた藤沢志摩守なる旗本だったという家の生まれだそうです。小中高と暁星で学び、小学校からフランス語を習っていたことが、63歳からのパリ留学の遠因だと思われます。
フランスでは、ムードンという、パリの中心から30分くらいの町で暮らしました。ここはヴェルサイユへ行く途中で、パリ中心から約10キロの所だそうです。ラッキーなことに、とんでもない日本贔屓の大家さん(ポルトガル人の老未亡人)が居て、日本人にしか貸さないというアパルトマンを相場の半分くらいで借りられました。間取りは3DK、バストイレ付き。おまけに完全家具付きなんです。ベッド、洋服ダンス、整理ダンス、ソファー、椅子、テーブル等は勿論、枕、毛布、敷布、冷蔵庫、オーブン、洋食器類、電気釜、飯茶碗、お椀類、お箸、鉢類までもが付いているそうです。
パリ大学Ⅲに入学して、フランス語とパリ史の勉強に励む訳ですが、新学期までの数ヶ月を、アリアンス・フランセーズという一級の語学校でフランス語を強化しています。ところで、本書で初めて知ったのですが、パリ大学は13校に分かれていて、ソルボンヌ校(パリ大学Ⅳ)以外は、おおむね所在地の名称が付いているそうです。著者が学んだパリ大学Ⅲは、サンシエ校(サンシエ通りに在る)と呼ばれているそうです。
本来の留学生の生活のほかに、ヴァカンスのこと、ストの話、大家さんのこと、動物愛護精神について日本人としての反論、パリの樹々は日本のように赤くならないで黄葉するのが殆どだとか、年末年始の過ごし方、大統領選挙(ジスカールデスタンがミッテランに代わった)、夫人同伴の留学生生活での日々の暮らしぶり、在パリ日本人たちとの交流・・・・等々パリでの生活を満喫している様が色々と語られます。
著者は、雨漏り同様、「功成り名遂げた」というほどの”世俗的”出世をした訳ではなさそうですが、確固とした信念で自分の人生を生きて来た人のように思われます。文筆関係の仕事はされて来なかったのに、しっかりした文章からも、それが窺われます。へなちょこ記事を臆面もなくUPしている雨漏りとは、エライ違いですね。(汗)
学位や資格を取ろうというのが目的ではないので、言うなればお気楽な留学ですが、63歳から自費で海外で留学生生活を送ろうという意気の壮なること、賞揚さるべきだと思うのであります。
凡百の留学記とは一味違った本書をお薦めする次第です。♪

