土屋隆夫 「不安な産声」

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2003.5 光文社文庫・刊 ¥740 元版 1989.10 光文社・刊



文庫本で400ページ超の大部ですが、どんどん読めちゃいます。
おなじみ、千草検事シリーズ。

所謂、倒叙物という形式で「犯人」の医大教授・久保(58才)が千草検事に宛てて書いた告白の手紙が、第一部 過去の章、第二部 現在の章、第四部 未来の章 となり、第三部 事件の章 は地の文 となっています。

久保の次男の恋人であり婚約者である大原久美の実家は大手薬品メーカーの経営者。その大原家の若いお手伝いさんが、庭で「強姦」され、扼殺された。
久保と、お手伝いとの接点と言えば、久保が以前大原家を訪問して、辞するとき、タクシーをつかまえるため大通りまで案内したホンの10分間ぐらいのものしかない。
警察・検察の取り調べに対して、久保は「動機」を一切語らない。
若い女に一目惚れして、襲ったのか?
それにしても彼女の体内に残された精液の血液型が久保のものではない。しかも犯行時刻に、大学の同僚の未亡人と電話で話したというアリバイもある。転送電話もケータイもない頃の話しである。

『いったい、どーなっとんね?』千草検事は標準語で考えた。ww
実は、この久保は、日本の人工授精の権威であり、数多くの幸せを生み出してきた良心的な医学者なのだが、20年前にこの分野で犯した個人的復讐が、天に唾することとなって、20年後の今、彼に降りかかって来たのだ。

ヴェテランのミステリー作家が九年間満を持して発表した力作です。
筋立てだけでなく、文章にもヴェテランらしい味があります。(エラソウなことを言ってます <(_ _)> )
最後のドンデン返しも意表を衝くものです。
by amamori120 | 2006-09-20 01:06 | 読後感・本の紹介