女(おなご)にこそあれ次郎法師 梓澤 要
2006年 06月 13日
「安政の大獄」や「桜田門外の変」でお馴染み、幕府大老井伊直弼の遠祖の物語です。
徳川四天王と言われた井伊氏は、そもそも西遠(遠江の西部-静岡県の西で愛知県と接するあたり)の井伊谷(いいのや)に勢力を張った国人領主(地頭職)で、上には大名(守護職)がおり、当時は今川氏の支配を受けていました。
その何代目かに、井伊次郎法師直虎という人物が居まして、これが本編の主人公なのですが、なんと女性なんです。
著者の梓澤 要(あずさわ・かなめ)サンは静岡生まれ。平成6年「喜娘(きじょう)」で第18回歴史文学賞を受賞、多くの歴史小説を書いておられます。
井伊氏歴代の系図を見ていて、「次郎法師直虎」の名を見付けた時は、当然男性だろうと思ったのに、それが、女性で、若くして出家した身でありながら、一族の命運を担って戦い抜いたという事実に興趣をそそられたとのことです。
今川、武田、織田、北条などの守護大名の力関係に翻弄される小領主の、忍従と苦難続きの生涯を送りますが、養嗣子虎松が徳川家康に仕え、一度は今川氏真(義元の子)に廃された井伊家を見事に再興させるのを見届けて安らかに世を去るのですが、波乱と激動の生涯を、優しい平易な文体で描いた佳篇です。
509ページという大部ですが、決して飽きさせず、一気に読了させる筆力は流石です。
歴史小説愛好家必読の書の一つだと思います。

