花籠の櫛 澤田ふじ子
2006年 05月 24日
幕末の頃まで、祖先が京都に住んでいたという澤田ふじ子サンの連作短編集です。
サブタイトルは《京都市井図絵》です。
☆辛い関
☆花籠の櫛
☆扇の蓮
☆夜寒の釜
☆雪の鴉
☆色鏡因果の茶屋
☆雨月 この7篇が所収されています。
それぞれが独立した短編ですが、何組かの市井の人間達が、ちょこっとずつ関連・連鎖しています。
舞台は京都(一部大津)です。
千家十職の一つ、三条釜座(かまんざ)の大西家で、茶釜をこしらえている佐兵衛と、大津の親戚がやっている材木屋にこき使われている娘のお八重。
大津代官所の惣元締め(No.2)沖宗弥兵衛と息子の芳之助。
錦町市場の大店で川魚問屋の入り婿でありながら親戚にいびりだされて瀬戸物を焼いている藤吉と、その娘で、蕎麦屋で働くお伊那。
その働きぶりを見て、お伊那を息子の嫁にと懇望している豪商・太兵衛・お登世夫婦。
彦根藩をクビになった横井惣右衛門の次男で、円山応挙に弟子入りして画家たらんとする野心的な安民。彼を世に出そうと料亭の仲居をして養っているお志乃。食わせて貰っているのに、大店の娘に惚れられたのをいいことに入り婿になろうと狙う不埒な安民。
藤吉の弟で、一時グレていて、押し込み強盗の見張り番を一度したが、改心して真人間になろうと懸命の民吉。
大津の川魚問屋の尻軽娘で、許嫁がいるのに、大津代官所の下役・中村彦四郎と駆け落ちしたお富。
彼(女)らが、少しずつ絡み合いながら、ドラマティックなエピソードを挿みつつ物語は進み、あり得べき大団円を迎えます。
京都の市井の人々の物語なので、当たり前ながら、会話は実に柔らかい京都弁でなされ、関西出身の私はホッとすることが多いです。
あとがきに、「他府県にくらべると人の移動が少ないのが京都の特徴の一つである。」と著者は書いています。
「人に謂われなく物を貰うな」「人の話に口を挟むな」「人と決定的な諍いを起こすな」という三つの戒めを祖先から受け継いだというが「人口流動の少ない京都で生きてきた人ならではの教えだ。」と著者は思っているとのことです。
人をそらさない京都人の本質をよくついているようです。

