たべもの江戸史 永山久夫

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1996.11 河出文庫・刊  ¥620  06.5.9 了
江戸の食い倒れは、文化・文政(1804~1829)の頃に、一応の頂点に達しますが、この時期を中心に、江戸時代のたべものについて、あらゆる面から詳述した、実に興味深い本です。




江戸初期は、「下りもの」といって、上方-京坂から、たべものについては主要なもの、酒、醤油、塩、砂糖、菓子などは移入され、関東は遅れをとっていましたが、それぞれのアイテムについても徐々に江戸独自の物がつくられていきました。

☆”上方と江戸の違い”ということで、主食、全副食、味一般について違いが表示されています。
            
握りめし 上方 オムスビともいい、俵型で黒ごまをまく
      江戸 円形or三角 ごま不使用
さい  上方 番菜(ばんざい)  江戸 惣菜
乾し大根の漬け物  上方 香々(こうこう) 香の物(こうのもの)
              江戸 沢庵漬  おしんこ
麺類  上方  うどんがメイン   江戸  そば
汁粉  上方  丸い餅を入れて作る 善哉(ぜんざい)という
     江戸 切り餅を用いる 汁粉と呼ぶ 
雑煮  上方  丸い餅を焼き、小芋、大根、焼き豆腐、で味噌仕立て
     江戸  切り餅、コマツナ   醤油、スマシ汁 
果実  上方 くだもの   江戸 水菓子
                           その他40項目以上

☆多彩な副食物
 ・○○汁というのも20種類以上紹介されています。
  ばくち汁なんていうのもあったようです。観世汁、しゃか汁、集め汁、は
  らら汁、ことづて汁・・・
 ・河豚(ふくとう)汁;フグですね。テツというのは、鉄砲の略で、当たった
  ら命がないというシャレなのは、ご案内の通りです。

意外なのは、すき焼き。仏教の伝来以来、四つ足の肉を一貫して忌避してきた日本人が、うまい肉をこっそり食う為に発明した料理法で、唐鋤(カラスキ)の上で焼いているんですね。鉄板焼きの元祖です。常用の鍋を用いると”けがれる”ので唐鋤を利用したようです。

天麩羅。安土桃山時代に長崎に来た天主教の宣教師達が伝えたといわれ、寺院(テンプル)の調理室から魚の揚がる芳しい煙が漂ってきて、そのたびに日本人は「おお、テンプルでは、またご馳走だ」というふうに垂涎したところからテンプラになったという。
また、油(アブラ)に天麩羅(ア・ブ・ラ)という万葉かなを当てて、ここから転じたとも。

調味料。西洋人の四味「甘、辛、塩、酸」と、中国人の五味「甘、辛、塩、酸、苦」に”うま味”を加えた六味が、日本人が伝統的に体得してきた味覚と言われています。
・ 江戸時代、食塩の90%は瀬戸内海周辺で焼かれており、これらの品
  質が良いので十州塩と呼ばれ江戸&各地に出荷されました。
  播磨(兵庫)、備前・備中(岡山)、備後・安芸(広島)、周防・長門(山
  口)、阿波(徳島)、讃岐(香川)、伊予(愛媛)の十州ですね。
  中でも赤穂の塩が「下り塩」の代表でした。
・ 砂糖。薩摩の黒砂糖、肥後、阿波、讃岐の白砂糖、肥前、安芸、伊予、
  土佐、紀伊、和泉、尾張、駿河、遠江、伊勢の黒砂糖。
  特に讃岐の三盆白は、品質・風味が優れていることから「和三盆」と呼
  ばれ、和菓子の材料として名をはせた。
  日本で初めて純白糖の精製に成功したのは才人・平賀源内で宝暦元
  年(1751)のことだという。その精製糖を「三盆白」と称し、これが白砂
  糖の極上で、他に雪白、太白、上白、白下などがあった。
・ 薬味。たべものの持ち味を引き出し、見た目の美(よ)さも添える香辛
  料が薬味で、すべて植物性。
  四季の位置を舌の上で捉える感覚こそ、弥生人が稲をこの緑深き国土
  に定着させて以来、日本人の中に受け継がれてきた繊細なセンス
  だ・・・と説き、江戸時代に用いられてきた主な薬味・・・生姜、山椒、唐
  辛子、大根、胡椒、紫蘇、山葵、大蒜、葱、芥子、柚子、蓼、三ツ葉、
  茗荷などにつき詳述されます。
☆江戸の発酵食品
  ”豆打”ってご存じでしょうか?
  枝豆を擂り潰した餡をズンダといいますが、この豆打(ズダ)から来てい
  るそうです。
  という訳で、納豆類、漬け物、醤油、味噌、塩辛について色々勉強出来
  ます。

☆ 江戸で人気の食べ物
  ・万延元年(1860)江戸市中のそば屋の数は、3760余軒だったそう
   です。ちなみに現在の東京の総数は三多摩を含んで5千軒というか
   ら、江戸のそば屋がいかに多かったか、江戸人がいかにそばを好ん
   だか、よく分かりますね。
  ・文化7年(1810)に本所横網町に開店した花屋与兵衛というすし屋
   が、握り寿司を売り出し、寿司の世界に革命を起こしたそうです。現
   在のファミレス華屋与兵衛との関連については言及されていませ
   ん。

 ・江戸の菓子 笹餅、幾世もち、桜餅、大福餅、そば饅頭、おぼろ饅頭、
  塩饅頭、薯蕷饅頭、虎屋饅頭、羊羹、おこし、岩おこし、煎餅、一文菓
  子、飴・・・
  虎屋饅頭が、固有名詞なのに、分野として扱われているのが注目され
  ますね。

  南蛮菓子 カステイラ 加須底羅(畠中 恵サンの本にこの字が出てき
                 ます)、家主貞良、粕底羅  とも。
         カルメイル 浮石羅、加留女以良
         有平糖
         金平糖 金米糖、金餅糖の字も使う  
                  ・
                  ・
                  ・

ってな訳で、江戸時代のたべものをすべて網羅した労作です。
草臥れたので、この辺で終わりますが、目から鱗・・・のシーンが多々あったことを申し添えておきます。
  
 
by amamori120 | 2006-05-13 20:14 | 読後感・本の紹介