「ぬしさまへ」 畠中 恵 

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2003.5 新潮社・刊  ¥1,365  06.4.20 了
著者の畠中(はたけなか)さんは、2001年「しゃばけ」で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビューしたそうです。
本書も、ファンタジーといえばファンタジーです。



大分以前にgetしてあったのですが、最近文庫化されたようでして書店で見かけたのをキッカケに読んでみることにしました。

ぬしさまへ 
栄吉の菓子
空のビードロ
四布の布団
仁吉の思い人
虹を見し事      6篇所収の連作短編集です。

長崎屋という、江戸で一番繁華な日本橋は通町(とおりちょう)に店を構える大店(今なら一部上場会社ですね・・・雨漏り注)で、廻船問屋、薬種問屋を営む店の若だんな一太郎が主役です。
17才ですが幼少の頃から蒲柳の質で、しょっちゅう床に就いている。主の籐兵衛も一粒種の大事な跡取り息子に甘くて、それは”大福を砂糖漬けにしたような物凄い甘さ”である。
日常生活においても専任の手代を二人も張り付けている。
一太郎、その割にはできがよく、「これではいけない」といつも思っているのはまともです。

この一太郎、実は「安楽椅子探偵」と「なめくじ長屋のセンセイ(都筑道夫の傑作シリーズ)」を兼ねたような存在で、手下達が集めて来た情報、証拠などから論理的思考・推理で殺人事件の犯人をピタリと当ててしまうのだ。『いつも寝てばかり、外出(そとで)の出来ない代わりに、からくり物を解くのは上手の若だんな・・・』
この手下達というのが、表紙に居るような妖怪達。一太郎に張りついている二人の手代も実は千年以上生きているという上席の妖(あやかし)なのである。さらに、長崎屋を開いたのは亡き祖父の伊三郎。一代で千石船を持つ大商人になれたのは、あまり大声では語れない訳があった。
伊三郎の妻、美しいおぎんは、齢三千年という大妖(たいよう)で、皮袋という異名を持つ者だった。数多(あまた)の妖(あやかし)らの助力で、長崎屋は大きくなったのだった。

祖父母は孫には底なしに甘く、虚弱な若だんなに、妖(あやかし)の兄やを付けたのも彼ら。一太郎が寝起きしている離れには、他にも人ならぬ者が数多く出入りしている・・・訳なのである。

ところで、この著者、雨漏りを凌ぐ甘党か、菓子屋の娘?と思うくらい菓子の記述が多いのです。煩を避けず挙げてみます。

14P 饅頭を口にすることができるなんて・・・
16P ・・・おとっつぁん、私に甘すぎる。まるで大黒柱ほどもある飴の棒
     のようだ
19P いつもの饅頭の土産も貰えなかった・・
19P 栄吉が一太郎の為に持ってきた品は加須底羅(カステラ)で、意欲
    作の南蛮菓子ながら・・・
22P ご苦労賃だと若だんなに出してもらった茶饅頭を三つも口に・・・
25P 得意顔で菓子鉢から饅頭を摘む付喪神に・・・
28P 清七親分の目は、大福のように大きくなって・・・
32P 前みたいに、おっかさんが甘い菓子をくれる事もない・・・
33P 袂から出した甘い菓子入りの油紙袋を・・・
37P 隠居が食べたのは茶饅頭でして・・・
38P 若だんなが幼友達の作った菓子をこまめに買うものだから・・・
38P いくら栄吉が餡を作るのが苦手だからって、美味しくない饅頭くらい
    で人が殺せるはずないだろう?
39P 栄吉さんの菓子の不味さは半端なもんじゃありません
39P ただの小豆から、あんな味の餡を作れるなんて、ある意味凄いです
40P たっぷりと木鉢に盛られているのは、うまいと評判の菓子所金沢丹
    後の薯蕷(じょうよ)饅頭であった
41P 珍しくも日限の親分が出された菓子に手を付けなかったものだから、
42P     仁吉が菓子鉢ほどの大きさに目を丸くした

56P 親分は、饅頭ならいちどきに三つも四つも食うくせに・・・
56P 長崎屋に来れば茶菓子はたっぷりと出るし・・・
57P 笹饅頭を四つも平らげた日限の親分は、良い機嫌で・・・
62P 今日は甘餅を折りに入れて持ってきた・・・
63P 阿波の上等な砂糖(阿波の和三盆糖・・・雨漏り注)よりも甘く甘く若
    だんなに接する・・・
65P 仁吉が差し出した甘餅に・・・
66P 先に菓子を摘む若だんなに・・・
86P お饅頭をいただいた後あたしは・・・
115P 若い男が入ってくる。手に菓子鉢を持っていた
116P ・・・砂糖と黄粉のかかった甘味を勧めてくる・・・
128P 藤兵衛は一粒種の跡取り息子に甘い。大福を砂糖漬けにしたよう
     な物凄い甘さなものだから・・・
135P 菓子と付け届けを引き替えに、自慢話を置いていく・・・
136P ほんのりと淡い色のついた求肥を五つも六つも口に放り込んで・・・
137P いつも砂糖菓子より大事に扱われている一太郎は・・・
138P 食べきれぬ菓子を気前よく出してくれるものだから・・・
166P 若だんなを、蜜と上白糖をかけた羊羹のように甘やかしている
213P 山のような菓子で誘いながら・・・
225P 茶筒に入っていた干菓子を勧めながら・・・
228P 佐助が菓子鉢を抱えながら、母屋の方からやって来て・・・
228P 今日の甘味は胡桃の入った宗及餅だ
245P 中身の干菓子を懐紙にくるんで山童に渡した


ここまで読んで頂いた方、お疲れ様でした。私も疲れましたwww
まだ漏れているのがあるかも知れませんが、ざっとこんな調子です。

最初にも記したように、今、文庫本で出ていますから、気楽に手にとってみてください。
お菓子と、ミステリーと人情話のお好きな方にオススメの一本です。
by amamori120 | 2006-04-24 13:04 | 畠中 恵を読む