芳野昌之「マルコ・ポーロ殿の探偵」
2006年 03月 26日
かの有名な「東方見聞録」の著者マルコ・ポーロは、東方-中国への大冒険旅行と元朝での滞在の後、ヴェネツィアに帰国し、程なくして交戦関係にあったジェノーヴァの捕虜となる。当時、彼は百万マルコと呼ばれていたが、日本語で言えば、千三つに近いニュアンスでしょうか。
同時代人は、「ホラ話」に尾鰭を付けて楽しんだそうです。
因みに「東方見聞録」のイタリア題名は「百万(イル・ミリオーネ」というそうですが、なんだかオカシイですね。
この著述は、マルコ・ポーロが収監中に口述したものを、ルスティケロというピサ人の、やはり捕虜がフランス語で筆記したものとされています。
このジェノーヴァ捕虜時代のマルコ・ポーロの行状・動静については、歴史は殆ど空白で、ここに目を付けた本書の著者が、空想力、想像力、イタリアに関する広範な知識を駆使して作り上げたのが、この”ミステリー”です。
先ず、羽振りの良い彫金工房の主が、自分の彫金用ノミで左目を刺されて殺される。彼の仕事部屋からは4本のノミが盗まれており、それを使った第2、第3の殺人事件が起きる。この事件の調査に興味を持ったマルコ・ポーロは、自分にそっくりの従兄と入れ替わって、外に出て調べて回るが、シャーロック・ホームズもかくやという優れた論理的思考、観察力、類まれな記憶力を駆使して、事件の本筋を見つけていく。
当時のイタリアは都市国家の時代で、ジェノーヴァ共和国はヴェネツィア共和国と地中海の覇権を争っている最中。
そのジェノーヴァの大貴族ドーリア家、ドーリア一族の経営する商館の総支配人(今の形態なら社長)とその家族、商館の各レベルの書記たち、ジェノーヴァ一の美女と謳われる女性とその一家、政府高官たち、謎のコーカサス美女・・・多くの魅力的な人間が活躍します。
そしてドーリア商館の有能な書記で、祖父がチパング(日本)の人間だったというジュリーオ・ムラーノ(村野)が、この物語の語り部を務めます。
そうそう、当時ジェノーヴァの人口に膾炙した俗謡をご紹介しておきます。これが重要な「意味」を持ってるんです。
♪ ジェノーヴァ一の色女
二股かけて あざ三つ
♪ お館一の色男
朝帰りみやげに饅頭(まんとう)一つ
さて、4本目のノミは使われるのでしょうか?

