宮部みゆき 「ぼんくら」

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2000.4 講談社・刊  ¥1,890  06.3.14 読了

平岩弓枝「御宿かわせみ」 (千葉方面の方〃、御宿は オンジュク じゃありませんよwww)の世界に通じるところがありますが、主人公が全然違う。かわせみの東吾さんは、、剣の達人だし、美男で頭も切れるし、与力の家の生まれ。
一方こちらの井筒平四郎氏は、いい加減草臥れた中年男で、容姿もそんなに良くない。ただの同心だし、お役目は”臨時”常町回り。決してエリートではありません。しかし感心なことに、悪いことはしないし、必要以上に賄賂も受け取らない。ただ、無難に日々が過ぎて行ってくれることのみを願っている怠惰なオヤジです。

そんな彼の担当地域にある、深川北町の”鉄瓶長屋”を舞台に事件が起きるんです。
まず、店子の八百富では、主の富蔵が寝たきりになっていて、倅の太吉と娘のお露が八百屋をやりながら病父を養っているんですが、或る夜、この太吉が家で刺し殺されてしまいます。お露は、「殺し屋」が来て兄を殺した、と申し立てます。
やはり店子で、煮売り屋のお徳が、夜、長屋の敷地内を人が走る足音を聞いていますが、(このお徳が、助演女優です)助けを求める、お露の足音かもしれない。

次ぎに、この長屋の差配、久兵衛が失踪してしまうのをキッカケに店子が、櫛の歯が欠けるように、次々と出て行ってしまうという不思議な事態が生じます。

オーナーの湊屋が久兵衛の後任に送り込んだ佐吉は弱冠二十代の若者で、とても差配の務まる貫禄はない。まるで、この長屋のみんなを穏やかに、静かに出て行かせようとしている風に見える・・・

直木賞作家の宮部みゆきサン、流石に人間の描き方が巧みです。みんな生き生きとしてるんです。人間テープレコーダーのおでこという子供、平四郎の甥で、美少女のような顔を持つIQの高そうな少年、謎の大富豪湊屋、その湊屋を付け狙う悪ご用聞きの憎まれ役、平四郎の幼友達で奉行所のシークレットエイジェントを務めているらしい男、深川の茂七大親分・・・実に魅力的な、様々な人物が登場します。
そして、なんと言っても主演男優賞は、ぼんくら平四郎。

こなれた、やさしい文体と口調で、手練れの作家、宮部みゆきサンが語る、ミステリー仕立ての好・時代小説でした。
by amamori120 | 2006-03-20 20:35 | 時代小説を読む