亀井千歩子 「日本の菓子」
2006年 01月 23日
こういう本の常道として、先ず「日本の菓子のルーツ」を探ります。
そこでは日本の菓祖として、田道間守命(たじまもりのみこと)が必ず言及されますね。そして「日本の聖なる菓子」として、シトギ、餅、焼き米と糒(ほしいい=干し飯)、飴について実に精しい考証がなされます。
次ぎに「人間の生活と菓子」とは密接な関わりを持ってきた訳ですが、所謂「年中行事と菓子」についての論考があります。
年中行事=晴の日=非日常ですね。年中行事と同様に使われる言葉に、歳時、歳事、時令、月令というのがあります。
また、晴の日を「節」といい「節会(せちえ)」「節供(せっく)」「節日」ということも古くから知られていたようです。
正月行事としては「歯固め」という、平安時代の朝廷で元日から三日間、長寿延命を願って固い餅を食べる儀式が行われたようですが、これに由来するのが、以前UPした「花びら餅」です。明治中期に、京都の菓子司・川端道喜が売り出して一般化しました。
「切り山椒」も新年のお菓子です。これは上新粉に砂糖と山椒の香りを搗きこんだ、しんこ餅。 蒸かしてあります。
金澤では、旧藩主前田公の紋所の梅鉢のお菓子を食べて新年を祝う習わしがあるそうです。「福梅」という銘だそうです。・・・・・
こういう内容で、雛の節供、端午の節供、麦の正月、仏教の各行事等に、日本各地で食べられるお菓子が詳述されます。
<秩父宮家では、ぼた餅のことを、”おやわやわ”と呼ぶそうです。>
また「人間の一生」も、お菓子抜きでは語れませんね。
「婚礼」を祝う菓子も、日本全国各地で独特のものが食べられているようです。
つぎに、安産と子供の健やかな成長を願うお菓子があります。
加賀の「ころころ団子」は安産の祈願が込められています。
九州で「飴がた」と呼ぶ方形の白い飴は、乳の出をよくしたり、産後の回復を早めたりするそうです。
全国各地にこの風習が残っているようです。
阪神地区では、娘が一人前になる「初潮祝い」を行う習わしが各地にあり、ぜんざいを炊いて祝うこともあるそうです。
また、我が国の風習として、死者が出るとすぐに枕団子や枕飯が供えられてきました。葬式には「葬式饅頭」がありますね。アイヌにも葬式団子があったそうです。
最後に、「信仰と菓子」というテーマで各地の神社仏閣と菓子の具体例が挙げられています。
小野妹子の里に伝わる小野神社(滋賀県志賀町)のシトギ祭り、大阪住吉大社の「土団子」。千葉香取神宮の「真菰行器(まこもほかい)」と「団碁祭り」、岐阜白山神社の「菓子盛り」等。
また、「お供え菓子」の色々としては、京都今宮神社のあぶり餅。八坂神社の稚児餅。上御霊神社の唐板。歓喜天つまり聖天(しょうでん)さんに供えられる清浄御団・清浄歓喜団。下鴨神社の夏越の祓いに供えた、みたらし団子。松尾大社の御覧餅。大阪天満宮の菅原道真の命日用のくじら餅とくじら羹。法隆寺の聖徳太子に供える菓子・・・・・・
本書は、サブタイトルにもあるように『祈りと感謝と厄除け』という切り口から日本の菓子を捉えた労作と言えるでしょう。

