辻 真先 「電気紙芝居殺人事件」
2005年 10月 30日
元・某日本薄謝協会のディレクターだった辻 真先さんの記念碑的なミステリーです。創成期のテレビは、三流のメディアで、某大宅壮一氏が酷評したように「紙芝居同様、いや紙芝居以下の白痴番組が毎日ずらりとならんでい」たようです。ハードもソフトも「映画」に比べれば、誠にお粗末なものだった。しかし、その中で、与太郎扱いされていた全員が、映画に追いつき、追い越せと、夜も寝ず、昼寝もしないで、死に物狂いで頑張った様子が本書からも痛いほど伝わって来ます。
そういう、当時の”テレビ屋の思いのたけ(著者の言葉)”をミステリー形式で書いたのが本書です。
著者・辻 真先を思わせる、というか或る一点を除いて殆ど著者そのものなのだが、信州松本の郊外浅間温泉在住の文筆家 鬼堂修一郎が主人公で、彼の視点で物語は進む。辻 真先ファンなら、ご存じの筈だが、この後の作品にもよく出てくる可能克郎・キリ子兄妹も第2の探偵役で登場する。
映画は初期のテレビを徹底して、いびっていたようだが、しかし慧眼の士という者は必ず居て、近い将来、テレビが上を行くだろうと感じていた一人に「帝都映画」専属のシナリオライター八木沼光一がいた。その彼がテレビにシナリオを書いて新しいエンタメを作ろうと張り切って仕事を始めた矢先に自殺してしまう。マンションの8階の非常口から「自分で」飛び降りるのを大勢の人が目撃していた。
27年経って、鬼堂が、それは殺人事件だったことを解き明かす。
そして、その事件の真犯人が、自動車で、松本駅前のビル工事現場に突っ込み焼死した・・・
「夢で逢いましょう」 「隠密剣士」 「私は貝になりたい」 「娘と私」 「シャボン玉ホリデー」 などの話題や、実在の俳優、女優、監督、演出家、ディレクター等が実名で出てきて懐かしい思いをしました。

