景山民夫を読む5「パンドラの選択」

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1995.2  中央公論・刊  ¥1,500  05.10.14 読了

パンドラとは? パン;汎、すべての、あらゆる  ドーラ;贈り物
 → 「すべての贈り物である女」と訳すのが正だそうです。
ギリシャ神話では、ヘファイストスが土から作った「最初の女」です。アテナは彼女に生命を、他の神々は、すべての魅力を与えた、とされます。
が、一方、非常に美しい姿と魅力を持ち、しかし恥知らずな心と、ずるい気質を備えた最初の女とも言われます。
エピメテウスの妻となって地上に降りた彼女は、禁断の壺を好奇心にかられて開き、中から貪欲、中傷、虚栄、病気、不和、飢え、老いなど、ろくでもないものが世界に拡がったので、蓋を閉めたところ「希望」だけが壺中に残されたといいます。
人間には、最後の最後まで「希望」があると解釈できますね。

地震がありました。一旦中断して、また続けます。
ここまで更新しておきます。


さて本書です。いつも通りゴジャゴジャ書いてネタバレさせます。
国連チームとIAEA(国際原子力機関)派遣員が、ロシア・シベリアのザヤルスクに行く。旧ソ連の核ミサイル基地だった場所だ。今はここで核兵器の解体を行っているのだが、1991年に調印されたSTART、戦略兵器の削減交渉後の実態をチェックするのが彼らの任務だ。核兵器の解体処理には日本の民間企業も関わっている。

何層にもなっている地下基地で調査を始めるのだが、以前から頻発していた地震が、今までにない震度でこの基地を襲い、調査チームは地下に閉じこめられてしまう。しかも解体途中の核爆弾の時限起爆装置が作動し始めてしまった。解除しない限り48時間後には爆発する!

元・核兵器基地であるため、各フロアーの間はコンクリートできっちり固められていたのだが、この並はずれた大地震で、コンクリの塊が天井を突き破って各フロアーをアタックし、殆どの技術者やワーカー達が死んだ。
査察チームは、エレヴェーター内に閉じこめられたり、最も頑丈に造られた中央監視室に居たりで、全員が辛うじて死を免れた。しかし、この後のことを思えば、死んだ方がいっそ楽だったろう。それほど過酷な事態が彼らを待ち受けていた。

景山民夫、流石に、元テレビ屋さんだっただけあって、シーンが小気味よく、パッパッと切り替わっていく。ザヤルスク、東京の出資会社社長室、モスクワ、CNN本社、ウイーンのIAEA本部・・・
起動スイッチがONとなってしまった核弾頭を搭載したミサイルが一層下にあることが分かった。尚悪いことに、この動き出したミサイルのある層のさらに2層下に、核爆弾が2千発も保存されているというのだ。これらが誘爆を引き起こせば地球が粉微塵になってしまう。

国連チームの八田は生き残ったロシア人ワーカー達と共に、コンクリ塊を取り除いて下層に降りスイッチを停めるべく、蟷螂の斧のような努力を続ける。作業は遅々として捗らず残り時間はドンドン減っていく。一方、IAEAのダニエルは、この地下基地内だけのコンピュータが生きていることを知り、恐ろしいことを考えつく。それは1層下にあるミサイルを発射させようという企てだ。

STARTによって、米露の各ミサイルは目標を外されているのだから、どこへ飛んで行くかはミサイル任せだ。航続距離は1万km。メガトン級の爆弾がどこかの大都市にでも落ちれば数百万の命が一瞬にして失われる。
しかし発射元に居る自分達は助かる。八田とダニエルは激しく対立する。
きまり文句だが、手に汗握る展開がなされ、そして・・・
パンドラの箱は開けられるのか?

景山民夫の得意とするジャンルの一つ、冒険小説の白眉です。

景山民夫 1 はじめ

by amamori120 | 2005-10-22 22:23 | 景山民夫を読む