田辺聖子を読む 3 「不倫は家庭の常備薬」

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1989.7 講談社・刊  ¥1,100  05.9.26 読了
表紙の絵がレトロで可愛いですね。男の方、藤山寛美に似てません?
「不倫は家庭の常備薬」とは穏やかじゃないタイトルですが、いつものオセイドン・ワールドが楽しめる短編集です。
ファンの方はご存じのように、会話だけじゃなく、地の文にも大阪弁が使われているのが特徴ですね。これがまた、よろしおますのや。

各編のタイトルがまた可笑しいんです。
☆フリンは家庭の常備薬
☆隣の奥さん
☆手づくり不倫
☆JISマーク不倫
☆正しいよそ見の仕方
☆不倫をすくすくと育てる方法
☆好きでんねん

世間ではよくあるらしいが、私の身の回りでは絶えて聞いたことのない”不倫”。田辺センセイは、どんな包丁捌きでコレを料理するんでしょうか?
今回はネタバレなしです。
気に止まった文章を少し、ご紹介しておきます。

”そもそも、女に不倫願望を抱かせるのは、夫のせいだと私は思っている。
 その一つは、夫が妻をホメないこと。
 二つ目は、夫の不機嫌。・・・”

”フリンなんて、今どき、アリナ○ンなんてのと同じ、ご家庭の常備薬みたいなもん、そんなん、ほんまに服用する阿呆いてまっか。六十男は新しいよってに、コトバでフリンしまんねん。・・・”

”家へ帰れば浮気になる。ーーーええいっ、もう今夜は帰らんぞ、と思えば不倫になる。”

”不倫は人生の香水である。・・・時々人生にふりかけてたのしむ。・・・”

”こわいような、嬉しいような、それでいて新しい世界へ一歩ふみこんだような、何ともいえぬ昂奮状態だった。そうして、なぜかいい匂いが身辺をとりまく気がしたが、それは「不倫」の香気に心をそそられているのだ、と気付いた。・・・”

”アタイの考える「一隅不倫」のルール
 1 「哲学」を持ってる相手を選ぶこと
 2 だまくらかす相手の「柔構造」「剛構造」をようく、見分けること
 3 週末が淋しいようなら不倫するな
 4 不倫は健康な人のものである ”

”浮気は精神安定剤だということ 圭子のような正論好き妻と暮らすには、精神安定剤を必要とする。しかしそれも、圭子と暮らすために必要なのであって、精神安定剤を咎められては本末転倒というものであろう。”

”フリンというもの、時によるとすくすくと育って果(み)をつけるものである。私はほんとにそれを服用して、それが意外にさわやかでおいしく、あと味よく、世界が広くなるのを知ったのであった。尤も、家庭の常備薬ではなく、そのたびたびに育てるものである。そしてすくすくと育って果(み)を結ぶと、ぱくっとたべてしまうものなのである。”


まだまだガンチクのある言葉、文章がいっぱいあります。

♪ 不倫したい、君とーならばー ♪  なんて歌がありましたね?
by amamori120 | 2005-10-03 11:34 | 読後感・本の紹介