カテゴリ:横山秀夫を読む( 11 )

横山秀夫を読む 11 「真相」 

d0065324_11543079.jpg
 2003.6 双葉社・刊  ¥1,785  05.10.1 読了

「真相」 読み始めてすぐ「アッこれはTVで観たぞ」と気付きました。
こうやって横山秀夫を読み進めて来ると、彼の作品は結構TV化されているんだなと判ってきました。

「篠田税務会計事務所」を営む篠田佳男は10年前息子の佳彦を亡くしていた。刃物で刺殺されたのだった。15才だった。通り魔的犯行とされ、犯人は杳として見付からぬまま10年が過ぎた。
そして或る日、警察から、犯人が判ったと連絡があった。強盗殺人で捕まえて、余罪捜査をしたら、佳彦殺害に行き着いたというのだ。犯人は自白するのだが佳男達遺族には思いもかけぬ事実がキッカケで、佳彦を脅した末に殺害に至ったというのだ。それは、佳彦が書店で”万引き”をしたのを見た、という事実だった・・・
ここで横山秀夫お得意の仕掛けがされていて、大変な新事実が浮かび上がって来る。そして想像もつかぬ結末に至る。

珍しく、それぞれ独立した短篇五つが収められています。
☆18番ホール
☆不眠
☆花輪の海
☆他人の家

横山秀夫の、仕掛け、引っかけを、お楽しみ下さい。
尚、これで横山秀夫・完読だと思っています。
彼の新作を待っています。
by amamori120 | 2005-10-03 12:15 | 横山秀夫を読む | Trackback | Comments(10)

横山秀夫を読む 10 「半落ち」 

d0065324_17164625.jpg
2002.9 講談社・刊  ¥1,800  05.9.22 読了
次女に言われて、映画「半落ち」を観に行ったのはいつ頃だったのでしょうか? その時、初めて横山秀夫を、はっきりと認識したような気がします。
寺尾聡と佐藤浩一が主演でしたね。(「亡国のイージス」もこの二人が主演でした。)

「半落ち」を読了したことで「横山秀夫・完読」にリーチがかかったと思います。後は「真相」を残すだけじゃないかな?
ストーリーは皆さんよくご存じだと思いますが、少しご紹介してみます。

W県警のW中央署に、県警本部教養課次席の梶警部が、妻を殺したといって自首してきた。動機も状況説明も実に明確だった。しかし、12月4日に妻を殺してから12月7日に自首するまでの2日間のことが問題になるが梶は一切喋らない。他のことについては、なんの矛盾もなく、穏やかに話す梶だが、この2日間についてだけは完全黙秘を頑として崩さない。
「完落ち」と思われたのに、これでは「半落ち」だ。
警察としては、1 遺体に寄り添っていた
         2 死に場所を求めて”県内”を彷徨っていた
         3 妻を殺したショックで2日間のことはよく覚えてない
1,2,3のうち2を発表したが、梶が新幹線上りホームにいたという目撃証言が出され、警察当局は窮地に立たされる。
空白の2日間」。警察官として、また多くの教え子を持つ教官として、泥まみれになることを承知で、さらには留置場や刑務所で生き恥を晒すことさえ厭わず、黙り通さねばならない理由とは?
空白の2日間」をめぐり、W県警本部捜査一課強行犯指導官(警視)・志木和正、W地方検察庁検事・佐瀬銛男、東洋新聞記者・中尾洋平、弁護士・植村学、W地裁判事・藤林圭吾、M刑務所統括矯正処遇官・古賀誠司    彼らの視点で物語りは進む。
全297頁のうち287頁が、この「空白の2日間」の解明に宛てられる。
そして最後の10頁。感動的な結末に涙する人は多いだろう。
by amamori120 | 2005-09-25 17:59 | 横山秀夫を読む | Trackback | Comments(12)

横山秀夫を読む 9 「第三の時効」 

d0065324_2315393.jpg
 03.2 集英社・刊   ¥1,785   05.9.19  読了

9月18日(日) 朝日新聞の書評欄で、横山秀夫「震度0」が採り上げられていました。その中で、この「第三の時効」に言及が何度かなされ、今までの所、「第三の時効」が、この著者の作品中ベストだ、最高傑作だと評価されていました。そして、「警察小説の王者・横山秀夫」とも評されていたのは、ファンとして嬉しい限りです。

本書は、表題作の他に
「沈黙のアリバイ」
「囚人のジレンマ」
「密室の抜け穴」
「ペルソナの微笑」
「モノクロームの反転」 が収められています。
いずれも、ゾクゾクするような、いいタイトルですね。

本書の各篇には、F県警本部捜査一課強行犯係各班が出演します。
命令系統を記しますと、 尾関刑事部長ー田畑捜査一課長ー各班長
                                 1班 朽木班長
                                 2班 楠見班長
                                 3班 村瀬班長

                    
「第三の時効」
武内利晴は幼なじみの本間ゆき絵をレイプし、恰度帰宅した、ゆき絵の夫を殺害し逃亡した。
それから15年が経過しようとしている。時効は目前だ。
レイプされた時に、ゆき絵は妊娠してしまい、武内は、その時の女の子が14才の中学生の娘になったことを知っている。
だから時効が過ぎれば、必ず連絡してくる筈だ。
しかし15年の時効が成立しても連絡はない。
次は、第二の時効だ。武内は事件を起こした直後に台湾へ逃亡していた。海外に居た7日間だけ時効が延びるのだ。
武内はこの規定を知っているのか?
そして7日が過ぎ、第二の時効も成立してしまった。
もう警察が打てる手はない。
ゆき絵の家や他の場所に張り込んだ捜査員達は引き揚げの準備を始める。そこへ捜査の責任者・楠見班長が来て「まだだっ」と止める。
「ホシを起訴した」というのだ。
普通、「時効」といえば、「公訴時効」を指す。つまり裁判を起こせるリミットの期日だ。その期日までに犯人を逮捕して送検・起訴となる訳だが、逮捕という手続きを経なくても犯人が特定されてさえいれば裁判所に起訴できるのだ。起訴から公判までは6日間。「第三の時効」が発生する。「第二の時効」から6日が過ぎれば、今度こそ本当に時効が完成する。
「第二の時効」くらいまでは誰でも知っているが、「第三の時効」のことなど警察関係者でも知る者は少ない。ましてや素人の武内が知っている訳もなく、はたして「第二の時効」が過ぎた翌日、武内から電話がかかって来た。そして・・・想像も出来ぬ結末が待っている!

More
by amamori120 | 2005-09-21 01:18 | 横山秀夫を読む | Trackback(2) | Comments(8)

横山秀夫を読む 8 「看守眼」 

d0065324_17351419.jpg
04.1 新潮社・刊  ¥1,785   05.9.16 読了

表題作「看守眼」の他に5篇が収められています。
「自伝」
「口癖」
「午前五時の侵入者」
「静かな家」
「秘書課の男」     仕掛け人・横山秀夫の技を楽しんで下さい。

★看守眼  38年間の警察官生活のうち29年間を留置場の看守として過ごした男の物語。彼は若い頃から刑事志望だったが、ついにその夢は叶えられることはなかった。
看守眼とは聞き慣れない言葉だが、刑事眼に対応するものだという。
看守というのは、留置人の監視と世話が職務だが、朝から晩まで多種多様な犯罪者と向き合っていれば、嫌でも刑事眼が養われるそうで、大抵どこの所轄でも刑事として見込みのありそうな若手に1~2年看守の仕事を経験させるという。

定年直前の休暇を利用して、彼は1年前の死体なき殺人事件を追っている。一人の主婦が失踪したが、不倫相手に殺されたと思われる状況で、相手の男を追究したけれども、自白も得られず、物証もなく釈放せざるを得なかった。真相は藪の中だ。
別件で逮捕された男を留置場で面倒をみたのが彼だった。
20数年の看守としての経験から、人を殺して間がない人間はギラギラしているが、日を追うごとに段々と脂が抜けていくということを知っていた。その男は逆だった。留置場に入って来た時は、まっさらだったが、日に日にギラギラして来た。男は入った時点では誰も殺していなかった。だが留置場を出てから殺す予定があったのだ。

百人からの刑事が調べ回って、ついに解決出来なかった事件を彼は明らかに出来るのだろうか?
失踪した主婦は殺されていなかったのか?

More
by amamori120 | 2005-09-18 18:42 | 横山秀夫を読む | Trackback | Comments(6)

横山秀夫を読む 7 「クライマーズ・ハイ」 

d0065324_18112373.jpg
03.8 文藝春秋・刊  ¥1,650  05.9.12読了

クライマーズ・ハイというタイトル、そしてこの表紙。梓林太郎の向こうを張って、横山センセイも山岳ミステリーでも書いたのかと思いました。
山岳小説、登山小説、山 といえば、井上靖「氷壁」、北杜夫「白きたおやかな峰」、夢枕獏「神々の山嶺」、深田久弥「日本百名山」等を思い浮かべてしまいます。

本書は、谷川岳の衝立岩に登るため、主人公の悠木が土合駅に到着したところから始まります。やっぱり山の小説だなと思ったら、ところがこれは新聞記者小説?なのではないかと思う展開になって来ます。
主人公は群馬の地元紙「北関東新聞」社会部の遊軍記者です。横山さんが実際に12年間記者生活を送った「上毛新聞」もライヴァル紙として出て来ます。これまで発表された作品に警察小説が多いことから、彼が警察(サツ)回りが永かったことが容易に想像できますね。

ところで、本書の”山”は、昭和60年8月12日にJAL123便が群馬県の御巣鷹山に墜落した、あの事故です。もし、これが長野県側に落ちていたとしたら、この小説は書かれなかったかも知れない。地元紙とはそういうものらしい。全国紙とは違うんですね。

この事故の”全権デスク”を命じられた悠木は、記事の取り扱いをめぐり、社長以下の経営陣、他部局のトップ、ついには自分が属する編集局の上司とも対立しまくり、己の信じるやりかたに固執する。上からの圧力に抗しきれず屈服し部下からの信頼を失う場面も。毎日、社に泊まり込み、殆ど睡眠もとらずにデスクとしての仕事に打ち込む悠木。

もしこの事故が起きなかったら、悠木は同期の安西と谷川岳の衝立岩に一緒に登る約束で、待ち合わせの場所、時間まで決めてあった。ところが、安西も急病で倒れ、約束の場所へ行けてなかった。

そして17年後の今日、悠木は安西の遺児・燐太郎と衝立岩に登ろうとしている。
クライマーズ・ハイとは、興奮状態が極限にまで達して恐怖感が麻痺してしまう状態を言うそうですが、新聞記者としての悠木もコレになっていたみたいです。


JAL123便の事故については、山崎豊子「沈まぬ太陽」第3巻”御巣鷹山篇を、ご一読下さい。ハンカチでは足りなくてタオルが必要になります。
d0065324_18561934.jpg

by amamori120 | 2005-09-16 18:57 | 横山秀夫を読む | Trackback | Comments(23)

横山秀夫を読む 6 「出口のない海」 

d0065324_2254595.jpg
2004.8 講談社・刊  ¥1,785   05.9.7 読了

「ルパンの消息」「震度0」以来の長編を読みました。
戦争物と言うのか、スポーツ物と言うのか、青春物と言うのか、本書は著者お得意の”警察”とは関係ありません。

先の大戦後期、A大学の野球部でピッチャーの並木浩二は、甲子園での優勝投手でありながら、大学野球ではパッとせず、”魔球”の工夫に日夜余念がない。支那事変が長引き、そして対米英開戦、国民生活は、どんどん窮屈になってきているが、学生は召集を免除されているので、彼も仲間達も比較的のんびりしているが、戦局は益々悪化していった。
そして遂に学生の徴兵免除は廃止され、彼も仲間達も陸軍或いは海軍へ引っ張られて行く。
並木は、自分を慕ってくれる美奈子を振り切り、海軍へ志願し、予備学生として基礎訓練を経て海軍少尉に任官する。
<同じ海軍予備学生系士官としては、有名人では、あの中曽根康弘氏、阿川弘之氏、島尾敏雄氏等がいますね---雨漏り・注>
並木が配属されたのは、空の神風特攻隊に対応する、海の特攻”人間魚雷・回天”部隊だった。これは、魚雷を改造して人間が乗り込み、片道だけの燃料で敵艦船に突っ込むという自殺的兵器だ。
<先述の島尾敏雄氏も回天部隊に居り、無事生還した人だが、そのあたりのことは、氏の著書「出発は遂に訪れず」等に綴られています---雨漏り・注>
寄せ書きをしたボールと美奈子の写真を持って、並木は「出口のない海」へ出撃して行く・・・


奇しくも、本日、テレビ朝日で、神風特攻隊のドラマを、山口智充他出演で放映していました。
by amamori120 | 2005-09-10 23:25 | 横山秀夫を読む | Trackback | Comments(6)

横山秀夫を読む 5 「深追い」 

d0065324_1156435.jpg
2002.12 実業之日本社・刊  ¥1,785  05.9.4 読了

★深追い
★又聞き
★引き継ぎ
★訳あり
★締め出し
★仕返し
★人ごと    
以上7篇が収録されています。いずれも4文字のタイトルなんですね。
そして、いずれも、某県警三ツ鐘警察署が舞台となっています。
連作ではなく、一話読み切り。主人公も異なります。

★深追い
信号無視のライトバンを白バイで追跡。ライトバンは必死で逃げ、電柱に突っ込んで運転者は死んでしまう。「深追い」と新聞各紙に指弾された秋葉は、監察官によって「正当な職務執行」と判定されたが、翌年の異動で交通機動隊を追われた。
今は、交通課で事故処理に当たる秋葉は、事故現場でバイブレーター式のカードポケベルを拾得する。被害者の物だ。
トラックに撥ねられて死んだ男の妻は、秋葉の小中学校時代の同級生だった。地元の警察に奉職していれば、こういうことには、よく出くわすものだ。
しかも、二人は密かに心を通わせていた、と秋葉は思っていた。
ポケベルがブルブル震えて ”コンヤハ オサシミ デス ” というメッセージが表示された。
葬式に行き、元同級生と17年ぶりに再会する。秋葉のことを思いだしたようだ。   返しそびれたポケベルが又震えて”コンヤハ カレー デス”と表示。受け手の夫は死んでしまい、もう見られないのに何故メッセージを送り続けるのだろう?
その後も、人の噂になるほど秋葉は彼女を訪問するが、元同級生を迎える態度ではなかった。
彼女には、元同級生ではなく「警察」の「深追い」ととられていたのだ。
夫婦仲は決して良くなく、おまけに亭主には心臓疾患があったことも判って来た。。。

警察小説の第一人者、横山秀夫 流石に巧い!
by amamori120 | 2005-09-06 12:42 | 横山秀夫を読む | Trackback(1) | Comments(16)

横山秀夫を読む 4 「動機」 

d0065324_22473474.jpg
2000.10 文藝春秋・刊 ¥1,650  05.9.2 読了
2000年第53回日本推理作家協会賞短篇部門賞受賞
動機
逆転の夏
ネタ元
密室の人    以上4篇が所収されています。

動機 警察官にとって警察手帳というものは命の次ぎに大事なものらしい。もし紛失でもしようものなら、警察における本人の将来は真っ暗だ。また、それを悪用されても困る。
そういう事態を防止するために、J県警本部警務部警務課企画調査官・警視の貝瀬は、非番になった警察官の手帳の一括保管を提案するが、刑事部の頑強な抵抗に遭い(何故か、警務部と刑事部は昔から仲が悪いらしい)、取り敢えず、いくつかの部署でテスト的に導入することになった。そのうちのU署で、まとめて30冊の手帳が盗まれるという前代未聞の事件が起きる。外部に漏れでもしたら大問題で、本部長の首なんかフッ飛んでしまう。もとより言い出しっぺの貝瀬には懲罰的人事が待っている。
犯人は誰か?そしてその動機は?
新聞発表まで数日の猶予しかない。
貝瀬は、犯人を見つけ、手帳を取り戻せるのか?
(「陰の季節」の二渡警視もホンのちょこっと出て来ます。)

逆転の夏 殺人の罪で10年以上服役し、出所して真面目に働く山本に、或る夜、未知の男から電話がかかってきて「或る人間を殺してほしい」という。山本の前歴は、勤務先の社長と80才近い保護司しか知らないはずなのに、この未知の男は、すべてを知ってるばかりか、山本の銀行口座まで知っていて、勝手に金を振り込んで来たりする。
謎だらけだ。
そして、とんでもない結末が待っている。

ネタ元 県警本部ビル記者室勤務の水島真知子は、「男の世界」で孤軍奮闘している。彼女の属する「県民新聞」は他の県内紙や大手全国紙に攻められて落城寸前。そんな彼女に、ある日、大手全国紙から移籍の誘いがかかる。彼女のネタ元が欲しいらしい。真知子が自分でネタ元と思っているのは地裁刑事部の女事務員だ。少なくとも二度、準スクープを真知子にもたらしてくれた。
ところが、この女事務員、真知子に言わせれば、信じられないバカ女だった・・・
★9/5追記 畏友さ・え・らサンのご教示によると、本日、TBS月曜ミステリー劇場で放映されます。詳しくは、コチラ


密室の人 殺人事件の審理中に、裁判長の安斎は、10分以上も居眠りするという大ミスを犯してしまう。オマケに、寝言で、一回りも年下の妻の名前を呼んだらしい。それも3度も。陪席判事の二人は勿論、速記官にも気付かれた。さらにまずいことに地元紙の司法記者にも聞かれてしまう。新聞に書かれでもしたら、裁判所の権威など、たちまちのうちに崩壊してしまう。上司の地裁所長は安斎を責め立てる。
睡眠が足りているのに何故居眠りなどしてしまったのか?
常用している薬のせいなのか?
若い妻の動きも気になる。
果たして如何なる結末が?
そして、タイトルの 密室 とは?


このところ、横山秀夫を続けて読んでいます。飽きませんね。
もう次ぎの作品を読み始めました。
by amamori120 | 2005-09-02 23:38 | 横山秀夫を読む | Trackback | Comments(8)

横山秀夫を読む 3 「陰の季節」 「顔」 

d0065324_1813417.jpg
「陰の季節」 1998.10 文藝春秋・刊 ¥1,500 05.8.26読了
 第五回松本清張賞受賞作  四つの中篇所収
 ★陰の季節  或る団体に天下ったD県警本部・元刑事部長が約束の3
  年を過ぎても辞めようとしない。困り果てた警務部長および警務課長は
  警務課調査官・警視の二渡真治に役目を押しつける。 この名前を見
  て やっと気が付きました。たしか、どこかのTV局で放映してました
  ね。上川隆也(今、上村香子とキャベジンのC.Mやってます)が二渡
  真治役で、高田純次が警務部長役でした。
  で、この元刑事部長に接触するのですが、全くガキ扱いで相手にしても
  らえない。人事異動発表の日は迫るし、「任務」は進まない。元部長を
  追っかけ回すうち、彼の活動ぶりに違和感を持つようになった。産廃の
  不法投棄の現場を専用車で視察しているというのだが、何かおかし
  い。運転手に詰問しても、ビビルばかりで埒があかない。そうこうする
  うち、この運転手が睡眠薬中毒で死んでしまう。と、不可解なことに、
  元部長が辞めると言いだした。
  真相は?
 ★地の声  なんでも「そうね、そうね」と言うQ署の生活安全課長の
  曽根警部はD県警最古参の警部。17年も警視昇任という天の声か
  ら見放されている。システムが変わり来年からは、筆記試験が導入
  されるので今年が最後のチャンスだ。この曽根についてタレ込みが
  監察課にある。とかく噂のあるスナックのママと曽根がデキテいる、
  というもの。調べると、そんな形跡がないと判明したが、一体誰が曽根
  を陥れようとしたのか?
  暫くして、曽根が、かの店を管理売春で摘発、ママ以下を逮捕するとい
  う手柄を立てる。果たして、曽根の、警視昇任を願う、地の声は天に届
  くのか?
 ★黒い線  D県警機動鑑識班の平野瑞穂巡査が無断欠勤、失踪す
   る。彼女は似顔絵が得意で、「お手柄婦警」と新聞で賞賛されまくっ
   たばかりなのに・・・彼女が「顔」の主人公となる。
 ★鞄  長老県議が警察問題で爆弾発言をするという。警務部秘書課長
   補佐の柘植警部は「議会対策」が仕事だ。本部長に恥をかかさない
   ためには、質問内容を知る必要がある。柘植は必死に活動を始める
   も、思うように進まない。県議がいつも持っている鞄に、質問関連の
   書類が入っているらしい。その鞄の中身を盗み見するチャンスが訪れ
   るが、それは柘植に対する罠だった。
   この県議をTVでは、長門博之が好演してましたね。
 ------------------------------

「顔」 2002.3 徳間書店・刊 ¥1,680  05.8.25 読了

 「陰の季節」の★黒い線 に登場する平野瑞穂巡査が主人公です。
 だから「顔」とは似顔絵の顔 なんですね。
 ★魔女狩り
 ★決別の春
 ★疑惑のデッサン
 ★共犯者
 ★心の銃口   以上五つの中篇が収められています。いずれも一話読み切りですが、連作でありまして瑞穂を取り巻く環境は、どんどん変わっていきます。
最初は、D県警本部鑑識課の機動鑑識班の一員だったが、★黒い線 での事件で、心のバランスを崩し、失踪、休職という破目に陥った。その事件とは;マル目(目撃者)の話を聞いて犯人の似顔絵を描いたのはいいが、逮捕された犯人とは少しも似ていなかった。それは証言者の思いこみで瑞穂の責任ではないのだが、「お手柄婦警 似顔絵で犯人逮捕」という形で発表しようとしている警察サイドには実に不都合だったので、犯人の写真通り描き直せ(一種の改竄)というものだった。
新聞には、警察の思惑通り発表された。メディアにもてはやされる瑞穂だったが、純粋な気持ちで警察官を務める彼女には到底耐え難い出来事だった。
半年の休職期間を経て復職した彼女は、意に染まない部署-広報室とか「なんでも相談テレホン」係の仕事をこなしながら、次々と起こる事件に関わっていき、似顔絵描きで培った、細かい観察眼を生かして、事件解決の糸口を見つけていく。
そして念願の鑑識課に戻ることが出来た。
「若鮎のような婦警 平野瑞穂」を暗示して物語は終わる。

 
by amamori120 | 2005-08-29 19:35 | 横山秀夫を読む | Trackback | Comments(14)

横山秀夫を読む 2 「臨場」 「ルパンの消息」 「震度0」

d0065324_2161339.jpg
数日間で横山秀夫を三冊読了しました。

「臨場」 2004.4  光文社・刊  ¥1、785     05.8.16 読了
「ルパンの消息」 2005.5  光文社・刊  ¥919  05.8.13 読了
「震度0」 2005.7 朝日新聞社・刊  ¥1,890  05.8.17 読了


「ルパンの消息」と「震度0」は、SNOOPYさんに触発されて。UPされてますので、興味のある方はそちらを、ご覧下さい。

「臨場」も、やはりSNOOPYさんのオススメによるものです。
”赤い名刺” ”眼前の密室” ”鉢植えの女” ”餞” ”声” ”真夜中の調書” ”黒星” ”十七年蝉” という八つの中篇が収められています。それぞれ一話読み切りですが、周囲の事情は進展します。

中心人物は当然毎回代わりますが、本当の主人公は、倉石義男。52才。L県警捜査1課調査官。”クライシス・クライシ”とか”終身検視官”の異名をとる。どう見ても自殺の事案を倉石が臨場して「殺しだ」と言えば、殺人事件として扱われる。また逆に、殺人事件だと誰もが思っても、「自殺だ」と言えば、無駄な捜査活動はしなくて済む。検死については、殆ど神様ですね。本書の中では一度も笑うシーンはなく、冷徹でニヒルな男だが、これまでのパーフェクト・ゲームにも拘わらず、敢えて”黒星”を拾う人間的な面も見せる。
シャーロック・ホームズも間違いなく裸足で逃げ出すでしょう。シャーロッキアン、ご用心!
by amamori120 | 2005-08-20 21:43 | 横山秀夫を読む | Trackback(2) | Comments(14)