樋口有介「初恋よ、さよならのキスをしよう」

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樋口有介「初恋よ、さよならのキスをしよう」
1992.5  スコラ・刊  ¥1,400
文庫版 1995.1 講談社文庫 ¥560 







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残念?ながら、表紙のようなシーンは全くありません。
大分前に文庫本で読んでいたのですが、単行本をgetしたので再読してみました。
樋口サンの作品には、柚木草平というキャラクターがよく出てきます。
創元社推理文庫では柚木草平シリーズというのがあるくらいです。
『彼女は多分魔法を使う』
『探偵は今夜も憂鬱』
『刺青白書』 & 本書『初恋よ、さよならのキスをしよう』です。

柚木草平は元刑事。階級は警部補だった。ある理由で退職し、今は刑事事件専門のフリーライター。離婚してないが、妻の知子、娘の加奈子とは別居している(逃げられた)。

加奈子(中学生)を連れて草津へスキーに来た柚木は、20年ぶりに高校の同級生でクラスの女王だった実可子に遭う。38才になったとはいえ、トンデモナイ美貌は少しも衰えてない。相変わらず裕福そうな暮らしをしているらしい。

一月後、実可子が強盗殺人の被害者となる。
彼女の姪で院卒後大学で助手をしている早川佳衣に事件の調査を依頼される。単純な強盗殺人とは思えないというのだ。実可子の姪だけあって、佳衣もクラクラするような美人。柚木は仕事を請けた。

元のクラスでは女王の実可子を中心に女3人、男3人という6人の特別なグループが出来ていた。柚木は勿論入っていない。
20年で、6人のうち2人が死んでいる。プロのテニスプレーヤーになったが怪我で引退を余儀なくされて自殺した男と、今回の実可子だ。
残りのメンバーが参列するというお通夜に出ることから柚木の調査が始まった。

調査を進めるうち、柚木は、これはやはり単純な強盗殺人ではなく、グループの残りの4人の中に犯人が居ると確信した。グループ内の愛憎、ライフスタイルの違い、に原因があると予感した・・・


樋口サンの作品は、一人称=ぼく、俺 で語られることが多いのですが、以下のような、記述、会話、独白が、とても気に入っています。
何冊も彼の作品を読み続ける理由の一つです。
みなさんも味わってみてください♪

男の人生がタンポポの綿毛のようなものであるという悲劇を・・・

俺の人生に対しては俺が一番意外だと思っているさ

ボタンの掛けちがえ、か・・・一つぐらいボタンの位置が違っても、君が着ている服は上等のブランド品だ

好きでやっている人生とはいえ、いつかはこんな生活と性格から、きっぱりと足を洗いたいものだ

結局、人生というのは本人が責任を取らされるようにできているものなのだ

中年になると同窓会が増える社会現象は、誰もが青春に対する未練を捨てきれないからなのだろう

自分に似合わないことをするのには不感症になっている。俺にはどうせ、生きること自体が似合わないんだ

ロマンティックな夢を見る以外には、生きている価値がないからな

女の子ってつまらない男も嫌いだけど、不安にさせられる男も嫌いなのよ

谷村は、たしか、自分の人生は妥協の連続だったと言っていた。妥協して今の会社に入り、妥協して結婚し、妥協して朝霞にローンで家を建てた。妥協して空しさを感じるのも妥協しなかった結果として苦労を背負い込むのも、結局はそれぞれの生き方なのだろう。

実可子だって人間よ・・・実可子とわたしの違いは顔の上の肉の付き方だけ。それがほんの一ミリか二ミリ違うだけで、女の人生はまるで別なものになってしまうの

見合いなんて、もともと一種の諦めの上に成り立っている制度なのだ

女は誰でも諦めないものよ。柩に入って外から釘を打たれても、まだしつこく女でありつづけるの

女は生きているだけで存在するが、男は、生きているだけでは、ただの幻影でしかない

不幸な女が奇麗に見えるっていうの、あれ、嘘だと思うな。不幸なときに奇麗に見える女は元の出来が違うだけなの。ふつうの女は、一番幸せなときが一番奇麗なものなの


如何です?
他の作品にも、こういうのがいっぱい!
樋口有介サン、一度齧ってみませんか?

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文庫版 1995.1 講談社文庫 ¥560 1996.6 初読了


本ブログでUP済み樋口作品はコチラです。「枯葉色グッドバイ」


知り合いもUPしていますのでコチラも覗いてみてください。
誰も私を愛さない
海泡
ともだち
by amamori120 | 2007-04-26 18:38 | 樋口有介を読む