山崎光夫 「遠い波紋」他

山崎光夫 「遠い波紋」他_d0065324_8543622.jpg山崎光夫  「遠い波紋」  1995.6 実業之日本社・刊 ¥1,600

マドンナの湯で、この著者と出会いました♪






山崎光夫 「遠い波紋」他_d0065324_8563665.jpg

7つの独立した短篇が収められています。

”白い再会”  信州上田の別所温泉が舞台です。UP済み「マドンナの湯」からも判るように、この著者温泉好きなんですね♪

兵藤工務店の社長との雑談で、空調会社に勤める徳竹は、信州方面へ温泉旅行をすることを話した。最終泊が別所温泉の恵比寿館だと聞いた兵藤社長は、自分の名前を出さないで、7年前に別所温泉のどこかの旅館の庭で知り合った赤松義直という植木職人のことを調べてくれるよう頼んだ。
 上諏訪温泉では駅構内の露天風呂に入ったりしながら別所温泉にやって来た徳竹は早速、旅館の女中さんあたりから赤松のことを訊き回り始めたが、みんな、その名前に反応するのに、口では知らないと言う。街に出て、土産物屋や商店で訊いても同様の反応で、収穫は皆無だった。
 兵藤社長に、調査は空振りだったと伝えるしかないなと思っている徳竹の部屋に、三十半ばの、気品がありながらもゾクッとするような、宿の女将が来て、赤松の話をしてくれた。
女将によれば、赤松は、丁寧な仕事をする腕のいい植木職人だったが、この旅館の姉娘ー女将の姉ーと、駆け落ちしたという。そして赤松は横浜の方で死んだらしいと。
 しかし、「赤松義直」と兵藤が書いたメモの字を見た女将は・・・・・


この他
”古い時間”、”黒い革鞄”、”長い化粧”、”淡い風景”、”甘い約束”、”遠い波紋” を所収。
直木賞に三度もノミネートされただけあって、さすがに小説巧者、どの作品も読ませます♪



山崎光夫 「遠い波紋」他_d0065324_8571978.jpg

「七つの偶然」 1991.5 実業之日本社・刊 ¥1,300

これにも7つの独立した短篇が収められています。
”三一致”の法則に則って書かれています。つまり、”場所”、時間”、”人物”という三つの条件が一致している設定のことで、その制約の上に立って物語りを構築するものですね。

”身代わり稲荷”、”三十秒の賭”、”野田屋にて”、”宝のつかい”、”前夜の祭り”、”写真館の客たち”、”偶然の切符”
それぞれ、刑務所の面会待合室、ボクシング試合の控え室、古い定食屋、分娩室前、有明・カーフェリ待合室、写真館の待合室、結婚式場に偶々集まった人物たちが物語を作り出していきます。

"宝のつかい”では、分娩室の前で、三人の男達が、難産に苦しむ妻のことを気に病んで、そわそわ、はらはら、どきどきしているのですが、やはり娘の出産を待っているらしい60歳くらいの、おばさんに荒っぽい言葉で、叱咤され、気を取り直して穏やかに待てるようになる一幕を描いています。実は、このオバサン、病院の地下の売店を預かる人なんですが、「子宝ばあさん」と呼ばれているんです。  さて、その異名の由来は?




正直言って、この著者、あまり知名度も高くないと私は思うのですが、やはりプロですねぇ。駄作は一つもありません。
私にとって新しい作家発見・・・という喜びを感じています。
「マドンナの湯」との遭遇は偶然ではなかったのかもしれません。
山崎光夫 「遠い波紋」他_d0065324_2311336.jpg

by amamori120 | 2007-03-04 09:05 | 読後感・本の紹介