池波正太郎「散歩のとき何か食べたくなって」
2006年 01月 31日初読は多分、昭和56年
私の大好きな景山民夫の本は、新刊書店では文庫本でも入手困難です。で、専らAMAZONに頼っている訳ですが、やっぱり人間亡くなってしまったら駄目だなあと思います。
一方この本の著者、池波正太郎は、鬼籍に入って15年以上経つのに、いまだに書店の棚には彼の文庫本がズラリと並んでいます。
「鬼平」「剣客商売」「仕掛け人藤枝梅庵」この三大シリーズを中心に相当なスペースを占めています。幅広く支持されているんだなあと思います。
圧倒的に「時代物」が多いのですが、エッセー集も何冊か見掛けることでしょう。 本書はその中の一冊で「食卓の情景」に続く、食べ物エッセー集です。
実は、私、食べ物については密かに池波正太郎に私淑しておりまして、本書に出てくる店をトレースして回ったことがあるのです。
足場の良い神田連雀町あたりは完全制覇しています。
例えば、蕎麦の『藪』、あんこう鍋の『いせ源』、鳥の『ぼたん』、甘味の『竹むら』、そばや『まつや』、洋食『松栄亭』等々。
それはともかく、エッセーにおいても”池波節”は変わらず、小説と同じように”池波正太郎ワールド”を楽しむことができます。
☆・・・・歩いていると思ったそうな。
☆老夫婦で仕てのけることになった。
☆・・・・この店ですごすたのしさは、まったく、
「こたえられない・・・・・」
ものだ。
☆老いたあるじが一刻者のおそろしく清潔な、
「ちょっと、うるさい・・・・・」
店であった。
こういう文体に接すると、「鬼平」の世界に入ったようで、
「嬉しくなる・・・・・」
雨漏り、なのです。