桐野夏生「ローズガーデン」

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ハードボイルドにおける女性の書き手トップとして君臨する桐野夏生の、連作私立探偵物です。
この講談社文庫では、「百合祭」で北海道新聞社文学賞受賞の、桃谷方子が解説しています。
或る程度ネタバレさせますが、それにも拘わらず、面白く読めるので、ご安心下さい。なお、主人公の村野ミロは、乱歩賞受賞作「顔にふりかかる雨」、「天使に見捨てられた夜」でも活躍します。

ローズガーデン 高校生のミロは義父と二人暮らしをしているが、二人は「寝る」関係。同級生の河合博夫と愛し合うようになり、大学を卒て二人は結婚する。一緒に暮らし始めて一年ほどで破綻が来た。「ミロの昼と夜を得たせいで、俺は心惑わせる混沌とした官能を永久に失った。」そのために、十七才の女子高生を買う。大学を卒てすぐに勤めたパソコンメーカーを辞め、電装部品メーカーに勤めた博夫は、ミロを独り置いてインドネシアに赴任した。汁粉色をした大河を十二時間かけて遡っていく博夫が、初めてミロの家を訪問した時のことから、それまでを回想する。その「庭は雑草が茂って、木の枝が鬱蒼として小さいジャングルのようだった。あちこちに置き忘れたみたいに、赤や黄の薔薇が咲いている。立ち枯れているのもあれば、今を盛りに咲き乱れているのもあった。」

漂う魂 ミロの住む新宿2丁目のマンションで幽霊騒ぎが起きて、探偵を生業とするミロは、管理会社から、真相を突き止め、騒ぎを収める仕事を受けた。新宿2丁目という場所柄、ゲイバーのママやホモ、普通のホステスやバーテン等所謂オミズ関係の住人が殆ど。調査を進めるうちに、ミロは、マンション中に悪霊ならぬ悪意が満ちていることに気が付いた。

独りにしないで 人妻の浮気調査をしている最中に偶然出会った、クチナシのように美しい中国人ホステス有美と彼女を愛した、ごく普通の安リーマン宮下にまつわる事件。有美の愛情を疑った宮下は、ミロに有美の気持ちを確かめてほしいという仕事を依頼されたがミロは断る。その後、宮下は何者かに殺される。調査の結果、中国マフィアがからんでることが判って来る。有美は宮下を愛していなかったのか?そして「悲しいが、凛々しい結末」が待っていた。桐野ファンなら、ご存じの「玉蘭」という名の店が出て来るのは、ご愛嬌。

愛のトンネル 地方から出てきて専門学校に通ってる筈の娘が、駅のホームから転落して死んだ。その娘が、実はSMクラブで女王様をしていたことを知った父親が、その痕跡を消す仕事をミロに依頼する。調査を続けるうちに、こらは殺人事件であることが判って来る。容疑者はSMプレーの客なのか、それとも?
錯綜する人間関係を、ミロは解きほぐす。       05.6.18読了


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by amamori120 | 2005-06-19 18:53 | 読後感・本の紹介